詩人:soRa | [投票][編集] |
冬の終わりを告げる雨も上がり
冷たい空気を暖かく塗りかえていく
大地に染み込むことの出来ない水溜りが
いくらか強さを増した太陽の光をのみこんで
空へと帰っていく
幾つもの出会いと別れを演出しようと
桃色の花たちはその準備に余念がない
ほらごらんよ
こうして季節は移ろっていくから
毎日が同じことの繰り返しなんて思わずに
ほんの少しだけ視点を変えてみるのも
いいかもしれないよ
その昔誰もが肌に感じたようにね
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黄昏に包まれた暮れ行く街
薄黄色に反射する光が
どんな優しい言葉よりも暖かかった
隠しきれない悲しみをさらけ出したままの心は
いつも突然に君を求めてしまう
ときどき遠くを見つめる君の瞳に
僕はどう映っているのだろうか
ときどきつく溜息は
僕に向けられたものなのだろうか
こんな黄昏の中にいると
そんな妄想に追い立てられて
孤独が縁取る僕の輪郭をあらわにしていく
黄昏の光もどこかに消えて
街灯かりが暗闇に浮かび上がってくる
作り上げられた灯かりは
時の流れを止めてしまうから
君の心を探すにはちょうどいい
君はそれを知っていたのか
笑顔よりもずっと優しい泣き顔を見せた
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深刻な世界情勢を伝える報道番組を見て頬をゆがめる
賑やかなバラエティー番組を見て頬をゆるめる
争いを止めさせようと集まった群衆はデモ隊となり
大声を撒き散らす
それを止めさせようと集まった警官は治安部隊となり
デモ隊と争う
嗚呼、
この偉大なる矛盾が争いを引き起こすならば
人間はそこから抜け出す事すら出来ないだろう
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元気そうでよかったよ
誰かに恋でもしたのかな
なんだか少し綺麗になったね
親父はひと回り小さくなってたけど・・・
お袋が逝ってもうすぐ一年だけど
よく頑張ったよね
今まではそんなこと思わなかったけど
お前、笑い方がお袋そっくりになってたぞ
彼氏の前では気を付けた方がいいかもね
とにかく
卒業おめでとう
お前が眠ったあと
親父泣いてたよ
飲めないくせに酒なんて飲むから
何言ってんだかよく分かんなかったけど
必死に両手を合わせて
何度も
何度も
お袋にありがとうって
いつの間にか眠ってしまったけど・・・
そばに居てあげられなくてごめんな
諦めないって約束したから
あの人も最後までそうしたから
あの人の子供だから
そんなの知ってるよね
お前もあの人の子供だから
それじゃ
親父のこと頼むな
おめでとう
心から・・・
愛してるよ
親父にもそう伝えてくれ
兄より
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少し疲れていたから
真夜中の街あかりの下を
とぼとぼと歩いた
眠らない街
群衆に溢れてる
楽しげにはしゃいでいる奴らの
悲しむ処なんて僕は知らない
僕の悲しみも
奴らには分かるはずもないだろう
あんな大人にはなりたくないと
こんな大人になって
あの頃に戻りたいなどと
愚かな憧れを口にすると
待ち構えていたように
自己矛盾が微笑みを誘う
眩しすぎるほどの街あかりに
溶け入ってしまいそうな都会の夜空の星は
とてもちっぽけで
まるで僕みたいだ
この街での心の疲れは
何の意味も持たないから
雑踏の中にすべてを捨て去ることで
なんとかバランスを保っているのかもしれない
だから今日も疲れた心の捨て場所を求めて
この街を彷徨い歩いている
そんな街のノイズはとても素敵でここちよい
掃き溜めのようなこの街が僕は好きだ
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幼い頃に僕を眠らせた母親の話す物語の結末は
決して知ることはなかった
果てしなく偉大な安心の中で
結末の分からぬ不安などとてもちっぽけで
知る由もなかったから
ただ眠る為だけの寝息を
素直にたてることが出来たのだろう
孤独と寂しさの中でその物語の行方を
必死になって探しているのは
あなたが冷たい墓標の中で
静かに優しく語りかけてくるから・・・
僕が見付けた愛の物語の結末を
あなたは知っているのですか?
こんなにも不安になるのは何故ですか?
どうか教えてください
あなたが語る愛の物語を
最後まで聞いてみせるから
きっと眠らずに聞いてみせるから
そっと瞳を閉じて
眠らずに聞いてみせるから・・・
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新しい朝の行方を探すために閉じた瞳は
ただ巨大な闇の中へと吸い込まれるだけだった
うまく眠ることが出来ない
幾度となく大声で叫んでみたけど
いとも簡単に弾かれてしまうから
虫唾が走るほどの優しい争いの言葉に
感情すら奪われて行ってしまう
自分の中にいる敵は
いつも優しく微笑んでいるから
向き合うことをつい忘れてしまうけど
いつもと変わらぬ寂しい朝を向かえても
不様に過ぎていく一日の終わりに
また新しい朝を探しているんだ
だからうまく眠ることが出来なくて
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君が楽しそうにキッチンに立って
鼻歌なんか歌っているから
僕は心の準備を始めた
何だか舌を噛みそうな名前の
フランス料理を作るのだそうだ
僕はその迫り来る恐怖をまぎらすために
君の鼻歌に合わせてピアノなんて弾いてみた
時々君が首を傾げたりするものだから
僕の心も僕の弾くピアノも
いつしかマイナー調の旋律を奏でていた
とうとう並べられてしまったそれらは
見た目こそ綺麗だったけど不思議な香りがしていて
それを君がフランスの香りねって言ってのけたのには
驚いたけど精一杯の笑顔を作り覚悟を決めた
一通り説明を聞いたがよく分からなかったので
薬屋さんまでの道のりを思い浮かべながら
思い切って口に運んだ
・・・最悪だった
君の感想もきっと同じだったのだろう
二人の会話は途切れたし
決して目を合わそうとはしなかったから
それでも
同じ気持ちで居れたことに奇妙な喜びを感じながら
静かな夜は過ぎていった
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柔らかなその唇が
無頓着なほど純粋な愛を語り始めるから
心の震えが止まらない
君がそんな話をする時
僕がいつも悲しがるのを知っていたから
身動き一つ出来ないでいる僕に
君はそっと接吻をする
互いに限りなく意味のない傷を
手首に持っていたから
それを舐めあうような二人の暮らしが
日付が替わる瞬間に
不思議と安心感を覚えるのは
いくつもの後悔を背負って生きていく覚悟と
決して疎外されることのない純粋な君の言葉が
戒律に縛られることのない極論だったと感じるから
日々の罪を隠そうとは思わない
変わり行く時の中で
大切な者をただ守りたいだけ
強くて壊れやすい者のために
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やわらかな風は二人を優しく包んで
いつまでも吹き続けると
そう信じていた
でもその風をふさいでしまう壁は
常に自分の心の中に存在していて
それは
欲望であったり
嫉妬であったり
不安、不信・・・
それらは時の流れに比例するかのように
自分自身の中で強くなっていく
規則的に刻まれる時間の中で
愛が解き放つ時間は不思議と不規則で
早かったり遅かったり
止まってしまう時だってある
季節を吹く風は必ずしも一定ではない
それが自然の摂理だ
優しい愛が起こす風も
季節の風に例えるとするならば
人間は季節をやり過ごす術を
少なからず持ち合わせているのだから
単純にあてはめてしまう事が出来れば
答えが見えてくるのかも・・・
諦めにも似た愛の形は
色々な物を傷つけながら
その形を変えていくけど
決してそんなことばかりじゃないから・・・