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黒の部屋


[29] アリア
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嫌われた本の話

古い本屋の本棚の上

おそらく人間にしたら女であるその本

内容はきっといろんな意味で悲惨だ

前の持ち主の手を離れさまよう

彼女は棚の中一番の嫌われ者

後ろ指を刺されながら新たな持ち主を探す

宗教的な表紙がさらけ出されたその時

彼女を手に取ったのは俺だったのか

俺じゃなかったのか

彼女が棚から抜き去られるその時

飛ばされる罵声の数々

生きた本からも死んだ本達からも

彼女はそれでも棚から離れるのを拒んだ

黒だったか白だったか

俺だったのか他人だったのか

彼女が新たな持ち主の手に渡ったたのかどうかはわからない

果たして一度でも読まれた事はあるのだろうか

彼女がはっきり拒んだ事だけは覚えている

赤文字のタイトルに惹かれた

それは俺だったのか

他人だったのか

虚無だったのか

あの本の行方も新たな持ち主も誰も知らない

果たして一度でも読まれた事はあるのだろうか

嫌われた本の話これでおしまい

2006/01/17 (Tue)

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