詩人:襤衣〜ランイ〜 | [投票][編集] |
・・・。
かしゃん
・・・。
床に落ちた グラスの破片を拾いながら
何処か遠くに心があるようで
夢か現かを ただただ 彷徨う
手に走った鋭い痛みで
やっと 自分に 戻る
静かに流れるクリムゾン・レッド
白い 白い 肌に
ゆっくり伝う 真紅の液体
心底美しいと思う
グラスに施された 文様は
わたしの お気に入りの一つだったけど
ひびが入って 粉々に砕けて
見るも無残
だけど
その鋭く突き出した そのガラス
何故 そんなにも わたしを惹き付けるの
何もない
虚無が この空間に広がって
真っ赤な生命だけが 意気揚々と光を放つ
器となるものは もう今にも崩れ落ちそうなのに
乳白色のまどろみは
わたしを 薄い繭で包み込む
暖かくて 優しくて 柔らかで・・・
・・・。
拾ったガラスを 新聞紙で丸め込み
そのままゴミ箱に 捨ててしまう
残ったカケラ
小さい 小さい 光の粒は
見向きもされずに 掃除機で吸われる運命で。
光であれるわけがないけれど
それでなくても わたしはカケラ
掃除機で吸われるだけの 小さなガラスの破片
そのまま光に反射されることもない
闇に消えて 闇に溶ける
乳白色の夢を見ることだけが
わたしに与えられた 自由
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