詩人:橙丸 | [投票][編集] |
覚醒した意識の中で
私は
夢をみる
形のない
意志だけの世界へと
引きずり込まれてゆく
儚げな夢うつつの中で
夢の中で夢をみるような
それは少しアンバランスな心地良さで
そっと頬を撫でる優しい風のような
なんともいえない不思議な気持ち
まるで見覚えのない場所
まるで見覚えのない世界
まるで見覚えのない想い
まるで見覚えのない自分
空はどこまでも澄んだ碧さで
霞んだ地平線はどこまでも遠い
ここはまるで
始まりの地球
ここはまるで
終わりの地球
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昨日は
カルキ色の
雨が降ったから
いつもはささないのに
いつもは濡れて歩くのに
俺はかさをさした
帰ってきて
かさをたたんだら
カルキのにおいがしたので
カルキ入りの水で洗った
そしたらよけいににおいがした
はやくてんきになあれ
そしたら
今日はいいてんき
カルキのにおいはとれたかな
昨日のカルキ色の空は
今日は風色の空
風のにおいがついたらいいな
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黄昏時の少し前に
ふと遠い空を見ると
不思議な色をしてる時がある
夕日の沈む真っ赤な色じゃない
それは不思議な色
降りかけた夜のとばりと
青空が溶けて混ざったような
薄く緑がかったような
それは本当に美しい
不思議な色
そしてその光を浴びた雲もまた
幻想的な色あいで空に漂っていて
その光景は
まるで
この世のものではない
夢物語のよう
けれど
信号が青に変わったので
周りの車が動きだす
周りの人々が歩きだす
だから
私がその美しい空を見れるのは
ほんの少しの間だけ
いつか
ゆっくり眺めていたいけど
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俺は忙しい
忙しいんだよ
そんな事やってるヒマなんかない
え?
何が忙しいのかって?
呼ぶんだよ
俺を
そう
俺を呼ぶんだ
朝昼晩と腹の虫
なんか食わせろと俺を呼ぶ
別に夜じゃなくても
いつでもどこでも何度でも
眠り姫の歌俺を呼ぶ
ゴロゴロと
腹のカミナリ
便所に走れと俺を呼ぶ
終いめにゃ
意志とは裏腹
下のムスコまで俺を呼ぶ
なんて忙しいんだ
とってもべりぃで
とってもびじぃな生活だ
そんな俺を
ただのなまけ者と人は呼ぶ
だから
俺は忙しいんだよ
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ハッピーバースデー
おめでとう
お前がこの世に生を受けてから
とうとう一年が経ったね
ハッピーバースデー
おめでとう
お前が母ちゃんのお腹の中にいた時
父ちゃんは毎日お前に話しかけてたんだよ
ハッピーバースデー
おめでとう
お前が母ちゃんのお腹の中で
二千グラムから大きくなってないと言われた日まで
人は誰でも当たり前のように生まれてくると思ってたよ
ハッピーバースデー
おめでとう
二ヶ月経って
陣痛で苦しんでる母ちゃんのお腹の中で
お前の心音が止まりそうになった時
俺の命をやるからお前を助けてくれと祈ったんだよ
ハッピーバースデー
おめでとう
お前が母ちゃんから生まれてきた時
父ちゃんが母ちゃんより先にお前を抱いたんだよ
小さな手
小さな顔
小さなお前という存在
二千グラムと少しの
ちっちゃなちっちゃなお前も
こんなに大きくなったんだね
ハッピーバースデー
ありがとう
父ちゃんと母ちゃんの子に生まれてくれて
本当にありがとう
今日も元気に
マンマ!
と叫んで暴れまわる
わが娘に
心からハッピーバースデー
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桜並木のその向こう
少しはずれの目立たぬ場所に
風も薫れば桜色
桜並木を歩いてみれば
桜の花びら舞い落ちる
あまりにたくさん落ちたから
まるで桜の花びら模様の道
街も負けじと桜色
見知らぬところを歩いてみても
どこもかしこも桜道
あまりにたくさんありすぎて
きれいな花も褪せてくる
桜並木のその向こう
少しはずれの目立たぬ場所に
ひと月前は咲いていた
白い梅の花咲いていた
桜の花もいいけれど
俺はお前のほうがいい
下から順に花をつけ
もうすぐ春が来るよと教えてくれる
小さくけなげな白い花
自己主張が激しい桜より
人知れずひっそりと咲くお前がいい
人知れずひっそりと散るお前がいい
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あぁ
やっちまった
あんときのヘマが
いまごろになって
これからってときに
あぁ
くそったれ
うまくいかねえな
せっかくテンパったのに
またフリテンかよ
世の中ってのは
うまくいかねえ事だらけ
ここまで苦労してきたのに
全部無駄になっちまった
あぁ
ちくしょうめ
また全部やり直しかよ
やり直しても
やり直しても
どうやり直しても
あれもこれも
またフリテンだ
ったく
やってられねえな
世の中ってのはよ
いっそ
このままいっちまおうか
いくとこまでいって
それで駄目なら仕方ねえ
自分の限界を決めてるヒマがあったらやってみろ
他人(ひと)の力は借りられねえ
ロンではあがれねえからな
そうだ
フリテン野郎で勝負するか
ツモであがれば文句ねえ
自分の力でやってみろ
自分のやり方でやってみろ
他人(ひと)の力はアテにすんな
あとのことは気にすんな
男はたまに無茶をしねえと
健康に悪いからな
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舞って
舞って
花びらが
ふと携帯からこぼれ落ちた
君の言葉の雫が
俺の耳朶を熱く湿らす
久し振りに話した君は
いかにも元気そうで
いかにも楽しそうだったのに
最後の最後でくじけてしまったね
それでも俺は
気付かぬフリをして
俺と君は
別々の場所で
別々の想いで
別々の時を過ごす
交わることのない糸を
どこまでも紡いで
待って
待って
あぁ
時が見える
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悠久の流れの中に
身を預けていても
いつしか
時がその意味をもたない場所に
身をおくことになる
そこでは
飾りたてた言葉も
厚化粧した心も
意味がなく
あるのは
頼りなくかげろう意識だけ
けれどそれは
空想にまどろむ心に似ていて
ハッと我に返ると
また当たり前の生活に戻っていくように
だれもが過去を忘れて
違うだれかになる
なぁ
なにを生き急ぐ
のんびり生きればいいよ