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橙丸の部屋  〜 投稿順表示 〜


[11] 場末の居酒屋で
詩人:橙丸 [投票][編集]

場末の居酒屋で
人生に疲れたような顔をした女将に
とりとめのないクダをまく酔っぱらい
そんな男になりてえ

薄汚れたスーパーのレジで
額に汗を浮かべながら接客する女店員に
話しかけられずに毎週通ってる独り者
そんな男になりてえ

うまくいかねえ毎日を
もがいて
もがいて
必死に生きている

男なんてもんは
無器用なくらいが
ちょうどいい

2006/01/24 (Tue)

[12] 失われてゆく風景
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瞼を閉じれば
そこにある
確にある
けれど
触れることは
二度とない
戻ることは出来ない
失われてゆく風景

ふと振り返れば
そこにいる
確にいる
けれど
交すことは
二度とない
戻すことは出来ない
砂漠の中の砂時計


この手には
二度と
抱くことのない
想い
いっそ
羽でも生えて
飛んでゆけ

2006/01/24 (Tue)

[13] 理由
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何ひとつ
特別なことは
なかった
言葉にも
出来そうになかった

ただ
前触れもなく
聴こえた



しゃらん



胸の奥で
透き通るような
音のない
音色が響いた

2006/01/24 (Tue)

[14] 南風
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ここちよい
午後の陽射しと
南風
街路樹の
木陰でそっと
小さな花が
白いその顔揺らしてる

汗をかきかき
歩いてゆけば
頬をひと撫で
涼しい色した
北の風
南風とは会ったかい

2006/01/24 (Tue)

[15] 軌跡
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その手から離れた
その想いは
ふわりとした
放物線を描いて
飛んでいった

もし
届かなくとも
その軌跡は
限りなく
美しかった

2006/01/24 (Tue)

[16] 青い記憶
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遥かむかし
まだマーメイドが風の歌を歌っていたころ
遥かむかし
まだペガサスに翼があったころ

その限りなく澄みわたった青の中で海は
その限りなく澄みわたった青の中で空は


遥かむかし
まだ月が地上で半身浴していたころ
遥かむかし
まだ星の囁きが聴こえていたころ

その限りなく透き通った黒の中で海は
その限りなく透き通った黒の中で空は


遠い
遠い
遥か彼方に
忘れて去られた
置き去りにされた
風景

私を呼んだ
気の遠くなるような
太古の記憶

いつか
探しにいく
あの
マーメイドの歌声響く
エメラルドの海

2006/01/25 (Wed)

[17] 無題
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少しだけ
開いていた窓から
一粒の雨が
俺の手の上ではじけて
小さな透明のしずくになった

それはゆっくりと
俺にしみこみ
俺の一部となる

いっしょに生まれた
何万
何億
何兆
何京の
雨粒の中で
広大な地上の
一台の車の
狭く開いた窓の隙間に飛びこみ
いま俺に触れたんだ

なんてすごい偶然だろう
なんていう確率の中で
お前は俺にたどりついたんだろう

そんな
気の遠くなるような偶然を
俺は愛している


あの日すれ違った風も
あの日見上げた空も
あの日降り注いだ星明かりも
そこに
俺がいて
その瞬間だけに
それらが存在していて

だから
毎日見慣れている
当たり前の風景でさえ
ほんとうは特別なのかもしれない


この世界に
無数の人が生まれ
無数の人が死んでいく
その中で
同じ国に生まれ
同じ時代を生きて
同じ場所に立って
同じ空気を吸った

気の遠くなるような偶然の中
俺は
いくつかの特別な出会いをして
そして
同じ数だけ
特別な別れをくり返して

でも
それはいつしか
俺にしみこみ
俺の一部になっている

だから
俺は
そんな偶然を
愛しているんだ
いつだって

2006/01/25 (Wed)

[18] 景色
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ここに立って
眺める景色は
変わらない
木々が風に揺れ
銀色の陽射しが
柔らかな光を投げつけ
涼しげな木陰をつくりだす
なんとなく
のんびりと時間が流れていくようで
ささくれだった心も
ヒビが入った心も
優しく癒してくれる気がする



あの道
子供のころに通ったあの道
周りはすっかり変わっちまったけど
あの道は昔のままだ
確か
あの先は


子供のころ通ったきり
二度と通ったことのないあの道


ふと
踏みだしそうになった右足
いや
やっぱりやめとこう

たとえ
本当は今がどうなっていようと
あの道の先には
あの景色がある
俺の知っている
あの景色が

それでいい

2007/07/11 (Wed)
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