ホーム > 詩人の部屋 > 藤井柚子の部屋 > 投稿順表示

藤井柚子の部屋  〜 投稿順表示 〜


[1] まごころを君に
詩人:藤井柚子 [投票][編集]



彼はまた彼女の泉で歌っているのでしょう
 ああ、あそこ、天使眠る地からは びうびうと風が吹きつけてくるのです
彼に群がる夢魔のうえ、彼女は空を見上げて蝶となります。消え去る西の光に赤い糸を縫い付けなさい、風に流される涙は煙となり彼はまぶたを閉じて神に祈りました。燃えた残りカスを手にとり彼女は息を吹きかける、星の住人の誕生、美しき青の誕生です。彼女による創世、彼にかかる屈辱を理解し、星は耐えています。震える星よ、あなたの悲しみを私は感じる、奇妙な運命だろうと、私たちは何ひとつの希望も知らず そこにいるのでしょう。誰も離れはしない、何の希望も知らないというのに
 ああ、どうして、 増えていく青を太陽が焼いていく、 渇いた彼が彼女の泉に顔を沈め、 彼女は優しく彼をむかえる、 おかえりなさい もしも彼女が私のすべてを許してくれるのなら、私も、沈みたい 、彼女の泉のなかには楽園があるのでしょうか、 彼女の泉のなかには神様がおられるのでしょうか、 彼は顔を上げないで、 今度は青が震えながら逃げ回るのです、 星は青より青く、 悲しみを、

 流し続けて

2007/01/18 (Thu)

[2] 雨、逃げだしたあと
詩人:藤井柚子 [投票][編集]



わたしは
消えてしまった光をのみこんでおちてゆくので
海へとかえってしまう
小さな夢が微笑みながらわたしのほうに歩いてきて
わたしは
夢の続きへとはいっていかなくてはならない

(教室では先生が小さな精霊を撫でている
 夕暮れのせいだ
 夜になるのがこわいので走らなければならない
 わたしは
 校舎を
 とおくから音がする
 生きていたひとたちがそっと並び待っている
 おと おと おと
 窓の外は白くなって
 今はふゆなんだと確認したからといって
 どこからが雪でどこまでがわたしなのかは
 わからない
 さむい
 さむいよ)耳の奥で猫の声がする
 こぽこぽ溢れだした先生はもう見えなくなった
 学校ってこわいな
 こわい
 教室のなかには水がなく 溺れている人も
 いない 今は
 飛び込む水もない
 流れていかないでよ、先生、流れていかないで
    いかないで )

 あ、 ねえ、 ほら
また猫がないたでしょう
今度は少し遠いね
終わってしまうと不思議と何の違和感もなく
わたしはひとつの光のようになりたかっただけ
    なんだって
知らない人には教えない
大切な秘密
教室に忘れてきてしまった光はすぐにちらばって
わたしは裂け目を探さなければならないの
遅れてきたチャイム
どこにいけばいいのかなんてわからないって
先生がわたしに内緒で教えてくれた
これはふたりだけの秘密
夢の続き
水の音 とぷん
夢の続きに

さよならしてる


2007/01/18 (Thu)

[3] 鳴らない電話
詩人:藤井柚子 [投票][編集]



教室でうずくまり、光に焼かれた青みたいに小さくなって眠った子がいた。私は違う、学校が終わったら友達に黙って先生のところに行った。彼女の夢のなかで泣いていた女のひとはどうして泣いていたんだろう、考えていると先生は扉を閉めて私を寝かせた、寝れば寝るほどに足元から痺れが上のほうへ上のほうへとのぼってきて、もう私の全身は痺れに支配されていた。先生が誰だかわからなくなって、何かわからないものになっているって気付いたけど、もう遅かった。

「おちてきた ほし/まがりくねった つき
 わたしたちはきおくからはなれ ゆめのよくしつにはいる ( あかくかためられたねんど たかいうたごえ くうきはもうそんなにすんでいない 」

さよならはいわせない

先生の右手にわたし 手を伸ばしたら 先生は遠くへと離れていく、わたしは星になりたい。光に焼かれたりはしない、崩れたりはしない、誰よりも星らしくなりたい。知らない人たちに寝顔は見せない、教室でうずくまったりはしない。青よりも青い星になると決めたから、泣かないで。曲がった月は教室で輝いて、彼女の夢から漏れる声が世界にひろがっていく、猫はかたちを変えて、先生は優しく笑うけど、動かない。何ひとつとしてわたし以外は息をするばかり

( みんなだ/あのこも てんしのそばにいく あおいほしのおくをさがして こえをそろえてうたうことを/わたしはきょひする くるしいから なぜだろう おしえてください
 教えてよ、先生」
 ねむったこがおきるのはよる まどのそとへと とりがはばたいてはきえる
 あれが このこ
 しびれてうごけないなんて / うそばかり )

教室のすみっこ
月が落ちて行くときに
わたしではない星が
流れていったとしても
嘘はついてはいけない
って あなたも
教えてもらったでしょう
起き上がった彼女に
わたしはふたたび生命と形を縫い付けてあげる
わたしも先生に
そうしてもらうように
してあげるから



2007/01/18 (Thu)

[4] Air
詩人:藤井柚子 [投票][編集]


(もううんざり!!)
 ほらほら、教室から飛び出した鳥、夢のなかの数学の授業で先生が言っていました、「死が我々の隣にないのであれば私たちは消えてしまうしかない!」って。 ねえ、先生、もし私が神様だったらどうします?あの、ごめんなさい、実は神様なんです、私。何でも思うとおりです♪でも死なんてあげません、欲しいって言ってもあげないのです。鳥を追いかけるのは燃えている青、( 青を燃やしているのは太陽。私は月?星かしら? 私は神様なのですが、気になります )何だって良いのだけれど私は先生の祈りだけは拒否しますね、これだけは絶対。神様も疲れているのです、全員の祈りを聞いている時間もないのですね、来週からテストでしょう。勉強に忙しいのです、私。ごめんなさいっ!そうだ、教室を砂漠にすれば先生は渇いて死んじゃうのかなっ?だから優しい私は教室を先生が死ぬまえに海にしてあげます♪それだと先生は溺れて死んじゃうのかなあ。あのっ、順番はどっちがいいですか?選んだほうと反対のほうを選んであげますねっ。でも死はあげないの。ごめんなさい!先生の言ってたとおり人間は死なないと消えてしまうのでしょうか?そこにすごく興味があるのです、私。消えないのであれば2007歳の先生が見てみたいな。骨だけになって私に死をくださいと祈る先生の姿を見てみたいのです。私、悪い子ですか??あ、でも死がなくなると本当に「我々」が消えるのであればそれはそれで見てみたいと思うのです。

(略)うふふ。私は本当に先生のことが好きだなあ。

 フジ―サンフジ―サン
隣の席の男の子が声をかけてくる、きみは太陽っぽいね。陽が眩しい。私は太陽とは交われないのに。
「あ、」窓の外では鳥が空へと飛んでゆき、燃えた青は鳥を追いかけ 空へとのぼっていった。私は神様なのに、私は神様なのに、
先生は教壇のうえで「我々は隣に死がないと消えてしまう!」と叫んでいる。
今は国語、ほんの少しの違いしかない。大丈夫、先生はきっとこれから燃えるのだろう。好きだよ、先生、死はあげないからね。
約束、骨だけになって私に祈ってください、突然消えたりはしないでね。
ふふふ。と私が笑うと先生は真面目な話だぞ。と私に言った。太陽が不思議そうに私を見ていると、先生が少し青くなってきた…、
気がしない?♪

2007/03/03 (Sat)

[5] かさをさしたねこ
詩人:藤井柚子 [投票][編集]

 

ぽろぽろ雨がふってきたね
わたし にんしんしたみたい あなたの 「コ」 ね あなた 濡れてるわ おなか触る? にんしんしてるの あなたの子 
あなたの あなたの あなた もうひとりの
ふふ みて ほら あそこ ひとり縄跳びしてるあの子(ねこ) きっと友達がいないんだよ 濡れながら縄跳びしてる
さびしいね/さびしいよ
ね うれし ? うれしいよね あなたに似てきっと人気者になれると思うの ね ね ね
濡れてるよ ほら こっちにおいでよ あなたも16歳だから結婚はできないけど働いてくれるよね わたしは家事をがんばるわ もちろん育児もよ がんばるわ がんばる
(ききました?
 妊娠ですって
(まだ16なのにねえ
(考えてるのかしら
 将来のこと。
しょーらい しょーらい しょーらい 黒い花が咲きました(あなたのこころに!) 握り締めると ぐちゃり と 潰れるわ 潰す? わたしたちのあかちゃんも つぶす?つぶすの? ねえ つぶすの? つぶしちゃうの?」

黒い猫をみましたか
あれは不吉です
どう不吉なのでしょう
とにかく不吉なのです
では殺しましょうか
そうですね
例えば 認められないあかちゃんみたく
ぐしゃっと
不吉なのはきらいですから 誰だってそうです
育てられないあかちゃん
とかでしょうか?
育てられないあかちゃん
認められないあかちゃん
あかちゃんあかちゃん
あれ なにか
泣き声がきこえませんか
にゃあんにゃあにゃあ
ああんあんあんああん
ほら 子供のなきこえが
ねえねえ ねえ

「ねえってば! 何時まで濡れてるの?ばっかみたいだよ 縄跳びしてる子も(くろい くろ くろ)もう帰ったし(最初からいたのかどうか ねこ)今日何の日か知ってる?
教えてあげるね
エイプリルフール
ウソ ゼンブ ウソ
つまんないの
つまんない/つまんないね
じゃあ ばいばい
あなたにはエイプリルフールですむけどこれ読んだ人には柚子はウソツキになっちゃうかもしれないね ね ね 困ったなァ♪
柚子ちゃんッ(笑)


2007/04/04 (Wed)

[7] 車輪の下に
詩人:藤井柚子 [投票][編集]


夜明けまえに落ちてくる
右手を下にして横向きになる 目を閉じて いつからか考える(わたしは丸くなり)いつからあれが降っているのだろう 今日も名無しの子たちが降っている アアアンアンアン声がきこえる 幼児 幼児
どぼん どぼん どぼどぼ
わたしはね 16歳
家族は増えましたか
ええ すませましたもの
何をすませたのかしら
わたし子供ですから
子供ですからわかりませんか
幼児が一匹 幼児が二匹
あの子右目が落ちてもけ
らけら 笑ってる
すました三匹 血のない四匹 わたしたちは繁殖をしている ぴぽぱぽぴぽぱぽ血の味がしないんです 噛みますが 皮膚 血の味
昔のことでしょう
いいえ今のことです
どうぞ おめしあがれ
いま わたしが16歳の時のことです ほら また 幼児が降ってきて海に落ちていったでしょう
名無しの子たち いまはもうただ焼かれ幼児だけが落ちてくる世界で ブルー かすかにこちらへ響く燃えた青 とおく とおく
あなた 親になりますか
いいえ わたしはまだ子供ですから親にはなれません/なりたくないにきまっているでしょう
なりますか親に
繁殖
増えたあとの暖かさ
存在しない親を憎む 絵のなか
船を用意させました
そして幾千の星に焼かれ
あなたは親になるでしょう
なりたくないっていってるのに?(幼児が一匹 幼児が二匹 海に落ちてく 幼児が三匹 ふふ それは美しいです)
親はどこからくるのでしょう 名無しの子たちは やむことなく落ちていくのに親は一人もい
ない きれい と呟く
16歳だから わたし
ごめんなさい/ありがとう
自分のところに還ります
落ちていくのみてるだけ名無しの子たちが落ちていくの(本当は楽しみにシテルンデショウ/ねえ ねえ)みてる
だけ 言葉なんていらない
どぼんどぼんといらない子たちいなくなって
やがてすべてがいらなくなる いつかすべてをいいわけにしても ブルー それらは傷口からわいてくる 発熱するでしょう 最初の親から 最後の親まで
あの青が消滅してしまうまでは
いいわけにしてもいいでしょう?歩きまわる生 死ね
―消えてゆくものたちが燃えた青に流され どこにもゆけないのだとしても やさしい骨たちがわたしを抱いてくれる
わたしはまだ 16歳
ただわたしが親になれないだけ

2007/05/01 (Tue)

- 詩人の部屋 -