あなたは俺の入れた
風呂が気に入らない


熱すぎる
熱湯だと
文句を言う


俺が入れた風呂は
最高に極楽だぞ


だいたい

湯が熱いんじゃ
ねぇだろ


あなたの体が
凍えているから


熱く感じるんだ


しばらく浸かっていたら
ぬるいって


それはあなたが
ぬくもったってこと



温かさに慣れれば
もっと熱いものを
望んでしまうんだろ


温泉に来た
老人が熱い風呂を
求めるのといっし…



いてっ



洗面器はフリスビーじゃ


ねぇぞ…






.

寒い夜には

あなたの一番
凍えているところを

あたためてやるよ



心の奥なんて
簡単にあっためられると
思ってるのと
憎まれ口



ばーか

こんなに冷たい爪先


末端神経が
あたたまれば

身も心も
ぬくもるんだよ






きっとな

たぶん

おそらく





よく知らねぇけど笑





.

何故かな


最近あなたが
素直に見える


やればできるじゃん


あなたも大人に
なったんだな


よしよしいい子だ


しねぇよ説教なんか
する必要ねぇだろ？


なんで体を
びみょーに避けるんだ


なま優しくて
気持ち悪い？







そこに正座をしやがれ




あぐらをかくな






.

お前
いい加減ふざけんな


今のそれ
わざとだろ？


文句があるなら
口で言え


態度悪ぃんだよ


別れてもいいんだぞ


あなたが
小さく笑う


…何笑ってんだバカ


『だって
大根役者の棒読みみたい
全然本気
入ってないじゃん』





うっせー！バカ



いちいち
見抜いてんじゃねぇよ…

俺もあなたも
頑固だよな

互いに一緒に
いる限り
よくなりてえって

いい影響を
与えあいてえって

ただそれだけ




相手をそれぞれ
気遣うことに
頑固でいような

これからも



その為の我慢なら
できると思わねえか？

動かざる時は
山の如しなあなたは


走り出す時
疾風の如し


炎のように
熱い気持を確認するため
俺がいつもの調子で
ゆっくり返事を
返す間に


もう話題が
峠をふたつほど
越えていて


崖っぷちでキレて
いたりする


そんな時に限ってなのか
そんな時だからこそ
そうなるのかは
想像がつくが


とにかく俺は
忙しくて
説得する時間がねえ


カツ丼食うか
だなんて言えば
きっと目が
キッと釣り上がるから


少し息を弾ませ
あなたを追い越し


前に立ちはだかるぞ


ばかだな
変わらぬ愛の気の数は
林の如しだ


苦情が出る前に
訂正するぞ


森…
いや 樹海の如しだ

つい口に出た
言葉なんだ


ドアを開けて
今はあなたが一人で
暮らす部屋に入ると


「ただいま」と


以前のように
さらりと言っていた


あなたの見開いた
瞳から


涙が数適溢れ落ちてゆく


一瞬止まった時間を
また動かして
あなたの頬を撫でたら


涙を流したことに
やっと気づいて
洗面所に逃げてしまった


チェストの上には
喧嘩の原因が
転がっていた


返してもらったのか…


何で離れて
暮らすことになったんだか
わかんねえ


もう帰るからな


あなたの居る場所へ


当たり前に
「ただいま」を
あなたに言えるように