詩人:地獄椅子 | [投票][編集] |
振り掛けるのはミルクだけじゃねえ。
奮い立たせるのはペニスだけじゃねえ。
サイケデリックな勇気。
つまらねえ雑音は消去して、俄然触発される、このビタースウィートな躍動に。
尻込みしていた現実を打破して。
冷徹な内省は根こそぎ嘘っぱちを覆す。
寄せ集めの知識。
借り物の思想。
自分だと思い込んだんじゃ、本物とは程遠い。
百年先など知らない。
この一瞬一秒を生きるだけ。
頭の中に虫がいるんだ。
皆そいつを「殺せ殺せ」と言うんだ。
確かにこいつは煩いし醜い。
だがしかし、いつしか俺はそいつに愛着を覚えた。
脳という籠の中の世界を、我がもの顔して勝ち誇ったように飛び回っている。
仮想永遠、自称真実。
強弁するのを聞けば聞くほど憐れで。
そいつはまるで支配者かのように振る舞う。
時々邪魔になるが、害虫として駆除する寸前、なぜか手が止まる。
もしもそいつを殺したら、どれほど強く生きられるだろう。
それこそ一瞬一秒を。
虫よ。
あらゆる負の感情を一身に抱いて。
虫よ。
空なんてないのに闇を飛んで。
虫よ。
愛に寄生し、夢に繁殖し、幸福を食らう。
虫よ。
俺は弱いまま不器用に生きるだけ。
この百年間お前を連れて。
飢餓と焦燥。
日常に没する意識。
腐乱する視界。
乱反射する光。
この目に世界は眩しすぎる。
鎧も盾もなく、傷と膿と痣ばかり。
心の下に痛みを隠し、拠り所となる孤独にしがみ付く。
ある日虫は死んでしまった。
可哀相に。最期は笑って。
俺はお前にキスをした。
忌み嫌われても懸命に生きたお前を。
そんな生き方しか、知らなかった。できなかった。
お前の逝き先は天国か?はたまた地獄か?
お前の好きな花ってなんだったっけ?
殺風景な墓で供養する。
虫よ。
お前がいなくなったら平和は実現すると人は言う。
本当か嘘かは知らない。
お前を憎悪とか欲望とか異物だとか呼ぶ奴もいる。
俺はそれを信じない。
お前は一度も優しくしてくれなかったな。
虫よ。
俺は人が恐い。
俺には時々、人が虫に見えるんだ。
一度も泣かなかった、お前は強く生きたよ。