詩人:乙 | [投票][編集] |
夢を描いていた筈なのにね、
君が描く絵はどこか、シビアな造り物に為り初めていた。
誰かにかける優しい言葉の定義と、
夢を目指す美しさを語った戯言がさ、
まるで商業主義の安売り笑顔のようにそこに並ぶんだ。
今なら安くしときますよ、えぇ、えぇ。
本当はさ、描きたいのは自分の夢だっただろう。
他人の望むような言葉なんて、
そろそろ分からなくなってきた。
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愛のやうに育んでいたのです、
偽り、の優しさ
偽り、の哀しみ
私たちとても果敢無い夢のやうで
何も彼も消えてゆくばかりのやうで
美しいのです、
破滅的だと云うことは
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冷たい風が吹く度に、月は冴えて輝きを増すのだろうか。
君のために?
愚かしいことの極みが君の想像の上に有るから、
それでは太陽の無い明日が来るに違い無い。
(いいえ、いいえ、悲劇など望んでは居ませんが、しかし私は)
──それでも哀れだと言うのだね、自分が。
歪まぬ道は、冷えた冬の空気を真っ直ぐと抜け、
月へと向かって伸びている。
玉兎と金鳥が出逢うまでもう幾日も無いのだとしても、
君があの空を見ないと言うならばね、きっと君には、
端から救いも奇跡も要らなかった。
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風の音が反響して、禍々しく唸っている。
トキハキタ、トキハキタ、──村人を呼んでいる。
谷底を吹き抜けた風がハーメルンの笛か。
凍えるばかりならば風の根元へ行こうじゃないか と
子供たちは消えてゆくんだろう。
大人たちは凍ってゆくだけで
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骨の髄から悪寒が染み出して、君の体を蝕んでいるんだろう。
肺から吹く冷たい風に、喉がヒュウヒュウと悲鳴をあげている。
なぁ、辛いだろう。
そろそろ休みたくはないかい?
窓の外が春になるのを待ち、
寒さなど文献で知れば良いじゃないか。
ねぇ、何故そんなにも現実にしがみ付こうとするの。
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馬鹿らしい迄に依存して、
結局、最後に残った結末は此れだ。
嗚呼、情けない!
其の仏頂面、彼の人に見せたことなんて無いだろう?
有るのは、今見れば醜いだけの、特別な笑顔!
鏡を見ろよ、醜いのは不幸のせいだなんて、
思っちゃあいけない。思い知れ!
微かに刺激する含みのあるキスに酔って
(少なくとも酔ったフリをして)、
抱き合うのは駆け引き
(少なくともアンタはスリルがあると思ってた)
のお決まりですか。
駄目ね。そんなのじゃあ、わたしは満足出来ない!
さあ早く、其の仏頂面を書き直せ!
わたしを弔って呉れ、永遠の主人よ!
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彼の眼を手に入れたなら、きっと、
僕の世界はもっと素敵!
貴方が、余りにも綺麗な笑顔で笑うので、
僕は、此の世界の鈍色に嫌気がしたので、
二人手を取り、逃げました。遠く、遠くと逃げました。
空色変化、露草の紅、輝きに魅せられては、
水芭蕉を渡って次の場所へ。
素敵!
こんなにも綺麗な世界が、僕の近くにも在ったなんて。
僕の知らない七色、君が教えてくれた輝き。
其の綺麗な笑顔。
其れだ、僕には持ち得ない、一番の素敵は、其れだ!
ねぇ。君の眼、僕に貸してはくれないか?
そうすれば、ねぇ、
きっと、僕の世界はもっと素敵!
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全く以て、憎々しいのは、彼の様な下賤の輩にも、
わたしと同じ、赤い血が流れている、という事だ。
なんとも馬鹿らしい。
無能で下等な生物である癖に、図々しくも、
"終わり無き人生"なんぞを求める──
そんな輩が、此の世界にはびこって居る事実が、不快なのだ。
わたしが信じる唯一つの死生感、
其れに反するものである、彼らの其の思考が、
こんなにも、わたしを不愉快にさせるのだ。
どんなに不平等な世界で有ろうとも、
回り来るのは、生と死よ。
終わり無きものなど、此の人の世に、有ると云うのか?
……人間は、愚かしい。
嗚呼、終わりが巡って再び来る始まりに拍手を!