ああ君の影にすら逢えぬ嘆き 指折り数えた月夜の数張り詰めた弓形はしなやかに この深い夜霧の晩に私は君の夢を抱くのだよ 枯れ草のように萎れていくばかりの喉の渇きとは逆さまに 君への想いは募り実りきった酸漿のように弾け ほら 百葉の静寂(しじま)の中芯からの呻きが生じるのだ 心臓の脈拍は旋律を為し心の寸劇に命の躍動を吹き込むのだ この若輩者は君なくしては心模様は弧月であり 望月のような心持ちには到底成り得ない事を知っておいてくれ給え
[前頁] [某の部屋] [次頁]