詩人:トケルネコ | [投票][得票][編集] |
悲しい夜は何処へでもない声を聞く
左の手の平にイチジクの葩を載せてみる
悲しい声は何処へともなく空に還る
満開の枝の下 ただ月を眺める
あなたはもうここへは来ない
あの子はもう ネムノキの奏べに呼ばれてしまった
不器用な椅子は座ることを許さず
見境もない心を腫らすことになる
雲は隠れ ムネの淡い地層に沈み
太古の化石に花がひらく
愛をください
流すべきものを知ったなら
罰をください
言葉では届かない由々の地平へ
識をください
原石の砂浜の静謐を辿って
満開の燈ごしに街を綾取る電線
あなたはもうここには居ない
あの子はもう ネムノキの風にさらわれてしまった