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トケルネコの部屋


[196] スプートニクの愛
詩人:トケルネコ [投票][得票][編集]

静かすぎる息が睦月の夜空を乾かすね
物々しく薪をくべたって 凍てついた窓が報せるのは
ひび割れたサイフォンの嘆き

ただ虚しさに紛れて 雨に長靴を擦り減らしたって
見つめるのはイルカの背に跨がる月精だけ

僕は愛を詠うよ
一つだけの君を何度でも紐解こう

望みのない奇形の世界に産まれ落ちた右手
逆らえない衝動なんて きっと認めないための期限切れの憧憬
あの子は誰でもいいと砂場に海を抉った
祈ることさえこの地上では捨てられるから
誰でもない僕はまた陰に立ち尽くした
独りになることを喩えるために 泳ぎ方を知るために

いつか茜の夢に君を捜したなら
何処にも行けない影を拾ったなら
美しい夜をラフレシアの暗喩で包みこもう
奥歯に隠れた赤目の小人が目を覚まさないよう

僕は愛を詠うよ
一つだけの星を解き放つように

僕はカタチのない自由を
二人の緩やかな繋がりを
上手く描けるかな もう、奪われることもないなら

何度でも君を汚すよ
何度でも君を犯すよ

一度も壊せなかった償いの窓に
美しい空っぽの光しか掴めない左手で



2010/06/29 (Tue)

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