孤独が移ろうものだとは海の底が乾くものだとは魚が隠した羽根を拡げて飛び立つものだとは教えてはくれなかった 誰も 雲すら去き場を探すものだとは今さらと呪い今さらと祈り今さらに凍える胸に純白の茨の蔦が這い 肺に冷めた花ビラが詰まるただ いくつも指折った掌の皺に赤い砂だけが零れて右眼を塞ぐ カーテンの隙間に蒼が揺れるさようならと 書き直された手紙伝えてはくれなかった 誰も孤独すら優しかったことを
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