詩人:evans | [投票][編集] |
昼下がりの光を浴びて
メトロの狭い石造りの階段を上ると
石畳の歩道とガス塔が目に飛び込んだ
10余年前のとある秋の日
スーツ姿の私は
緊張と不安に包まれながら
人々の波に熔け込んでいった
老舗百貨店を左に眺めながら
前方に高速道路を望み
ビアホールの前の
細い路地を左に入った
葉っぱを茂らせた木々が
長いトンネルをつくり
その木々の間からは
うっすらと
木漏れ日がさしこんで
舗道に影を落としている
少し歩くと右前方に
赤いレンガに被われた
7階建ての瀟洒な
建物の前に辿り着いた
社会という大海原
漕ぎ出す許可を得るため
人生のひとつの分岐点
それから半年後
卒論に国家試験という
厳しい冬を越えて春を迎えた
この街もまた
舗道の木々は
桜花のトンネルへと変わり
私を祝福して迎えてくれた