詩人:まちるだキリコ | [投票][編集] |
あなたの夢に石が落ちて
川は急に小さくなってしまった (かなしいとは何だろう) そこは白くあかるい 君は鶴をひとつ渡してあの人に別れを告げる
さようなら さようなら
わたしの手を握る君の手は暖かい わたしたちは
生きているんだと
氷のうえを歩いている鳥たちは 晴れた冬の日ざしに包まれて 少し 少し
東へと歩いていく
川の横を君は行くんだね
人は通らず何の音もなく ただ無音( かどうかさえわからない 聞きたくないだけなの かも )風景だけが神様の手によって変えられている かなしいとは何だろう わからない
涙は誰も流さないのに
悲しい夢を見た
悲しい夢を見たのですと
(ねえ 知っていますか 今年の冬は少し暖かい
あたたかいんです)
翼があればいい
遠くに飛んで見たことのない景色をあなたに教えてあげる 君も知らない景色
あしもとからこおる
消えていくものがある
わかってる
わかっているのに
ただこの時間は長すぎる
ああ、
あなたの夢に石が落ちて
川は急に小さくなってしまった わたし ひとり歩くことなど考えられずに
でない涙のかわりにわたしは深く息をだして
君の 優しい手を待った
薄汚いわたしは
こそこそと裏へと逃げる
(帰りたい 石がぱしゃんと音をたてて川に落ちる
帰れたあなたは深夜に君に見守られ優しく
紅を塗る あなた)
もうあなたの知らない人ばかりがあなたをかこむ
きっと君のことも
もう知らないのだろう
暗くなってきた夜のこと 月の下でひとり
君は少しだけ泣いていたようにみえたのだけど
わたしには、
なにもできなかった方が
かなしかった
詩人:まちるだキリコ | [投票][編集] |
君は白い雲の神様に触れた、寒い夜の残り人、だからと言って安らかに眠ることを誰も拒絶はしない
ただ私は、君より先に小さな雪を見て、風の行方を知ろうとする
君が起きたら君に教えてあげたい 何でも 何でも
冬の朝に川が薄く氷り
鳥達がスケートをしているようす、ぽつんと踊れない小鳥が親鳥をみていた
(あ、君は私を見つけ手を振る ああ、私は教えてあげたいかったのに)
どこかで小さな魚が隠れた、君のまわりは明るすぎるほど光に包まれている
ひとしきり ひとしきり
雪が君のまわりにあつまると君は春はどこから来るんだいと雪に聞いた
春は来る、春はそこまで
砂をつかみ川に流す、魔法のように氷がとけて
鳥たちは君に話しかける
ちい、ちい、ちい、
冬日さす空を見上げて君は川の氷を放り投げた
そこにはわたしたちの羽が、見えた気がする
「ひとりで歩いてきたの」
君は優しく私をなで光のほうへと歩いていく
あ、ぴたりと雪がやんだ
音だけが遠くからしてくる、雪の音、風の音
なでられた頭をさわる
うれしいもんか
うれしいもんか
君を追いかける
少しだけ、 笑いながら