詩人:どるとる | [投票][編集] |
彼はもういない ベッドはもう朝早くから
もぬけのからさ
野に咲く花に自分を重ねて
空に浮かぶ雲に生き方を学んで
在りし日の君を想い
在りし日の心を想う
曲がり角の向こう
何が待つのか
わからない
行ってみりゃわかるのにそれまでが長いな辛いな
同じ気持ちになれるかな
それだけが心配で
食い物も喉を通らない
在りし日の影が揺れてる
でも今はもういない人の残り火さ
彼女はもういない ひび割れた窓から時折吹くそよ風が供えられた花を揺らしてる
ただそれだけ
明日は知らない。
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君は覚えているでしょうか
はじめて自転車に乗れた日を
ずっと昔のことさ
なかなか乗れなくて
転んでばかりいた
押してくれる母親や父親に叱られた
どうしてこんなことしなきゃいけないのかな
たくさんの疑問や悩みを 抱えながら自転車の練習を毎日していた
自転車にも乗れない
人はいないんだ
だから自転車に乗りなさい 乗れるようになりなさい
わけのわからない理屈をいつも大人は並べて
漠然とした要件だけを突きつけて
確かな理由も述べないままで僕はいつの間にかそれでも自転車に乗っていた
自転車にはじめて乗れた日は なぜか楽しかったんだ
きっとそういう気持ちにさせたくて一生懸命僕に付き合ってくれたんだろう
世界が広がった気がした 世界が僕に近づいた気がした
自転車にはじめて乗れた日は 僕自身に打ち勝てた日だって
思うから笑うよ
あの日の自分の傷跡に 今も膝小僧に かすかに刻まれてる
自転車にだって乗れるんだ だからなんだってできるんだ
行こう 行こう 夢の向こうへ
行こう 行こう 勇気のペダル漕いで行こう。
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争いのある国の子どもたちは自分たちの境遇をうらんだりしない
争いのない国に生まれた僕たちはしょっちゅうつまらないことで人を簡単にうらむ
君が生まれた世界
僕が生まれた世界
それは同じだけど
全く別の世界だ
重ねられないよ
君の見ているその世界が 悲しみで満たされないように
そっとふるえる君の淋しげな手を僕が握っていてあげるんだ
君の見ているその世界に 残酷な現実があるのならば
君が抱えてるその現実を僕も一緒に受け入れよう 約束さ
君の見ているその世界に光を与えたい
争いのある国の人
幸せに惚けてる僕ら
似てるようで
全く似ていない
話し合えないよ
誰かの見ているその世界は 僕の見ているこの世界と何も変わらないというのに
君の見ているその世界が 例えば悲しく映るように 見え方ひとつで変わるから
君の見ている世界も
僕の見ている世界も
日ごとに変わるんだ
今日はどんなふうに映るだろう
君の見ているその世界は
僕の見ているこの世界は
すべての人が見ている世界は
ひとつかな。
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夕空に浮かぶ いくつもの顔がある ただいまを待つ誰かのそわそわや
おかえりを抱えて家路目指す人の心
今日もいろんなことがあったな
楽しかったこと
悲しかったこと
気づけば両手は泥だらけ でもそれが生きていたということなんだろう
人から人へまた人へと繋がってゆく思いがある
バトンリレーするように明日の自分にこの思い届けよう
僕から君へ そして誰かへと受け継がれる絆がある
二人三脚するように一人ではできないよ
支えられて歩ける
風と寄り添い 帰ってきた君の顔が ほころんで ただいま言うから
今日を生きている意味がにじみ出るよ
その涙さえ 明日に届けたい
バトンリレーは続く
明日の自分へと命のバトンは渡される
走り出す僕の背中
今日の僕が見送る
明日の僕の顔には
きれいな笑顔が浮かんでる
生きる気持ちにあふれている。
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気づけば あたりは夜 僕はただ窓の外
見つめて あるはずもない星を探す
手のひらに 優しさひとつ 乗せてみるけど
君のぬくもりと比べても 君の愛に勝るものなどないことを知る
帰ってきた僕はドアを開けて 鍵を開けることにさえ手こずる始末さ
少しだけ悲しかった
少しだけ切なかった
それだけでただそれだけで生きることが疲れてしまう
心に夜はやってくる
瞳に映るものは幻
ただ笑うだけただそれだけでもとても難しくてため息が出る
足取りも重く 歩き出した日々のずっと先に 揺れる不安の隣に寄り添うわずかな希望
夜の窓辺に 寄りかかって僕は想う
明日もこんなふうに生きる痛みを知るのかな
夜の窓辺は ひどく泣くのには都合がいい
全ての悲しみとさよならするにはまだ時間が足りないよ
君はまだ笑うべきだ
悲しみ越えて笑うべきだ
君はまだ歩くべきだ
歩いて幸せに出会うべきだ
僕は僕に言い聞かせるんだ
夜の窓辺に寄りかかって
眠る前のぼんやりとした 遠のく意識で
わりに力強く想う
そうだ生きよう
少しでもそんな
気持ちがあるかぎり。
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弱さは強さで 強さは弱さで
傷跡隠せば べつの傷跡がひらくよ
流れていく血潮の中 優しさを潜めてる
夜が 朝が ぼんやりとした 昼下がりが
この街の空気を重たく 変えている
色鮮やかに 染まった 季節の色をした景色が瞳に 色んなものを映しては 幸せの影にある涙さえ届ける
もう僕は子どもじゃないんだ だからわがまま言うことはできない
だだをこねても許されていたあの頃 思い出していた 休日の夜
嘘偽りなく 伝える 僕や君に 伝わる
曲がった光 僕は照らされている
無理矢理にでも笑わなきゃだめなとき
僕は子どもみたいに泣きたくなるよ
でもそれはまだ素直な心 捨ててないからできることだ
だから今はまだ曲がった光に照らされたまま 強がることもいとわずに
歩こうよ 君は独りじゃない。
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当たり前なこと
ありふれていること
道端に転がる
小石や空き缶や吸い殻のように
だだそこにあるだけの存在だって
君が僕のそばにいてくれるだけ
それだけで僕は簡単に幸せになれてしまうのです
君の手が 僕に触れるたび 僕の手が小さく見える
君の手は 僕の悲しみを簡単に 消してしまう魔法の手さ
君が 笑うたび 君が 涙するたび 僕は映画を観てるように心が動かされる
うまく言えないな それさえ不器用で
届かないものに手を伸ばすように 歯がゆい日々だ
今日もずるをした
明日もどこかで
逃げ場を探すだろう
君は強いから
そんなことしなくても大丈夫なんだろう
少しずつ離れていった僕らの心の距離
君はもういない
僕の目の届く場所には
魔法の手は ぬくもりだけをかすかに残したまま 今でも僕を離さないのに
ずるいな 恋の魔法がまだ解けないから。
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僕は 思いを 言葉や文字にするときに
誰か大事な人のことを頭の中に思い浮かべて 机に向かうんだ
いらだったり 怒っていたりしたんじゃ
どうにも気が散ってしまって 何も書けない 何も見えない
だから 愛している人たちの笑顔を思い浮かべて 僕は描く
全てのことを何もかも受け入れて 包み込んでしまうくらいの大きな心を携えて
やさしいきもちで
あなたやあなたの身の回りで起きる些細な出来事を綴るんだ
コトコトと湯気を立てるお鍋の音を聞いた朝
何も欲しくならない
不思議と欲は影を潜めて空腹を愛してる
迷ったり 悩んだりしているけど
どうにも不利益を被る気がして 悩みの種や迷いの出どころを探すことはしなかった
今日もあなたの笑顔を思い浮かべてる
全ての概念を取り払ってしまえるなら 誰も幸せになれると考えてる だけど現実は天と地の差もある
やさしいきもちは
時に自分や他人を裏切ってすぐにむなしさに変わるけど
それでもやさしくありたい
やさしいきもちで向かい合えば
やさしいきもちがかえってくる
ばかみたいなほど
そう思っていたいだけ
あなたが大好きだから
僕は見つめてる
やさしいきもちで
この世界とあなたを。
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手の届かないものを追いかけてる
本当のことも嘘偽りも今は深い眠りの中で
心静かに落ち着かせて寝息の隙間に夜が流れている
遠ざかる光に手を触れようと伸ばした
僕の手は空を切るだけ
特別にはなれなかった
僕ができることは君ができることと同じ
目の届く範囲で音の届く範囲で生きること
心はビードロ 僕の心はひどく脆くて移ろいやすい
一箇所にとどまっていられない 光の速度で旅をするのさ
目には届かない光でも遠い星を掴もうとする人がいる
そこにあってでもどこにもない光 幻と戯れて呼吸するのさ
僕らは言ってしまえば小さな星屑だ
何も誇れるものありはしないけれど
誰か大切な人を思うような強い気持ちで日々を越えていく
夢から覚めると
何かをなくしたようで 心が空っぽのままさ
思わず気づくと手を伸ばして 何かをつかみかけたような
そんな気がしたよ
そして瞼開けば そこにはただ夜が猫の額ほども長く伸びて
壁ばかりの街にまた誰のためでもなく
風が吹くよ
これは全て夢だ
悲しいのも嬉しいのもわからない
ただ僕はまだ昨日以上に手の届かないものを追いかけている。
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僕はきれいにはなれない
正しいことだけをできない
だから歌えない賛美歌があるんだよ
どんな花にも棘があるように
外面じゃわからない内面がある
だから君の笑顔は賛美歌と同じなんだ
きれいすぎて 信じられない
疑ってしまうよ逆さまの心
時計のない世界なら
急かされることもなく
君のその醜ささえ愛せたかもしれないね
僕ら何にも知らないままで
心の距離を近づけようとするたび
見える互いの闇に気づいて 肌を触れ合うことさえ拒んだ
さよなら さよなら
遠ざかる人の面影 揺れている
おはよう ただいま
繰り返す人の暮らし 傍らの愛
僕は汚れたままでもきれいな賛美歌を歌えるだろうか
日々に重なる 本当の心の向こう側
賛美歌という名の生き方を僕はしたいだけなのさ
白でも黒でもない灰色に輝くあなたと。