詩人:どるとる | [投票][編集] |
白い 紙ひこうき 空へ 飛ばしてみよう
夢を描いた 紙ひこうき 未来へ飛ばしてみよう
夕暮れの空にほら
浮かんだ雲は なんだか俯いてるみたいで
少し 切なくってたまらなくなったんだ
訳もなくぶらぶら
どこまで行くのだろう 願わくばこのままどこまでも
何か探していた 何か求めていた
中途半端の僕にも見えるもの つかめるもの
明日に 向かって 飛んでいく紙ひこうき
いくつもの 人の願いや夢が 叶いますようにと祈りながら
心の中で折ったのですね
夢紙ひこうき 飛ばして 今、僕も未来のドアのノブに そっと手をかけてみる
錆び付いたブランコ 漕ぐのが好きだった
誰も居なくなったあとの公園が好きだった
涙流しながら帰っていた 道の上に 街灯が並んでこちらを見ている 優しくしないでくれよ 冷たくあしらってくれたら
何もかも捨てられるのに
何か 忘れていた
何か 見失っていた
優柔不断の果てに見た後悔に似たためらい傷
明日に向かってゆく 旅人のふりで さすらってみる 風に吹かれてみる 何かを得た代わりに何かを失ってゆく
そんな定めにさらされながら
夢紙ひこうき そっと僕の元に帰ってくる
紙ひこうきを作り直そうと 紙を開いたら そこに懐かしい夢が下手くそな文字で書かれていた
「宇宙飛行士に
プロ野球選手に
船乗りに 海賊に
王様になれますように」
統一性も何もない
バラバラな夢が躍ってた
明日に 向かって 飛んでいく紙ひこうき
いくつもの 人の願いや夢が 叶いますようにと祈りながら
心の中で折ったのですね
夢紙ひこうき 飛ばして 今、僕も未来のドアのノブに そっと手をかけてみる
今はあの頃の僕のように夢を追いかける
子供たちに 笑いかけてみる。
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ふと目をやる部屋の中 テーブルの上
所在なげに 置かれた誰かが好きだと
言っていたティーカップ
満たされることのない思いのままで
ただ先を急ぐような街を眺めてる
凸レンズから覗いたような ぼやけた世界には こんな苦笑いがお似合い
日々悪びれることもなく積み重ねる嘘や言い訳がシャボンのように浮かんでる
独りきりの帰り道影は長く伸びて
僕より低い君の影が僕の背に追いついた
何かをごまかしながら笑ったのを
君は見逃さなかったんだね
誰にも必要とされず道端に捨て置かれた吸い殻や空き缶は
誰が拾ってくれるのだろう 誰が愛してくれるのだろう 襤褸切れのような心
夕闇から 逃げてみるけど夕闇は僕が どこまで逃げても
いつの間にか夜を連れてくるんだ
静かすぎてさ僕にはたまらなく 寂しかったよ
だからだから
誰にも必要とされず道端に捨て置かれた吸い殻や空き缶は
誰が拾ってくれるのだろう 誰が愛してくれるのだろう 襤褸切れのような心
僕なら迷いもなく愛せるのに
人は人の涙のそばを素通りしてゆく。
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晴れた昼下がり 君は窓辺に座り
絵を描いていた 何を描いているのと
聞くと「世界」と大ざっぱに言ったよ
風は私のちっぽけな苦悩を せせら笑うように 吹き抜ける
忙しさと忙しさ隙間に ほんの少し生まれた 開け放された自由の中で見つけた愛すべき時間
いつか咲いていたヒルガオの花
君が言う「世界」はきっと僕が思うよりずっときれいで
ずっと 輝いているんだろう
だから 自分ばかりの悲しみに 僕は迂闊に涙を流したりはしない。
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神様の指で筆記された世界には
いつか「終わり」が書き足され
神様は 人間は失敗作だと言った
だけど 人間は時折神様の意表を突く
土星の輪っかを くるくる回る
運命の周りを くるくる回る
神様はその様を ずっと眺めてる
干渉は一切しない
だけど時々 神様は涙を流したりする
何かに笑ったりもする
神様は言うよ
今なら人間を 愛すこともできるだろうと
神様は言うよ
今はあの日じゃ知らない人間の心を知ったからと。
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たとえば 悲しみは
環状線をゆく
電車にも 搭載されている
たとえば 喜びは
スズカケの木の
根元に光る
昨日降った雨の小さなひと粒に重なる
さよならを言うのなら
はじまりを置いていけ
いつかまたここで
出会えるその日のために
ただいまを言うのなら
おかえりをくださいな
果てしない物語の
あらすじをまだ知らない
環状線をゆく
いつものあの席に
座って 眠り込む
あの人の胸の中に
その睫の上に
明日は舞い降りる
そっと静かに。
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赤い 赤い りんごにも似た夕暮れが
商店街を 赤く 赤く染めて 染めている
ぶらぶら 歩く
用もなく 冷やかす
たまに 立ち止まる
そんな時間がなんだか好きなんだ
その時の気持ちがなんとなく好きなんだ
かじられたりんごのように たったひとつの赤いりんごが
またひとつ かじられてほら やけに目にしみるよ あの夕暮れ
チャイムが鳴ればもうじき夜が来るだろう
腹も減るだろう
帰ろう りんごを買って。
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波はただ 押し寄せて
波はただ 引いてゆく
繰り返すように
始まりから終わりまでをなぞるように
波はただ 繰り返しを繰り返していく
押し寄せた波が引いてゆくと
その波はもうさっきまでの波じゃない
さっきまでのあなたじゃない
今日が 押し寄せて
そして引いてゆくと
明日、押し寄せた
波が昨日の波とは
違うような そんな
そんなものなのです。
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当たり前の中に
そっと咲いた幸せ
軽く息をするように
なんてありふれた
何気ないものなんだろう
ただそこにある 幸せにこれといった名前をつけることもなく
ただ幸せと言ってみる僕の中にはただ青い海と空が広がる
笑う 泣く たまに怒る ささやかですが満たされています
涙も笑顔も ちょうどいいくらいにあって
多すぎず少なすぎず だけど確かにここにある
当たり前の中に
そっと咲いた幸せ
ただそこにいる 人たちの営みの傍らに 寄り添うように 幸せは座っているよ 名前のない幸せだから 通り過ぎてもわからない
だけど なんとなく
僕ら 向かい合ってる
そんな気がするのさ。
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名前を呼ばれたような気がして風に誘われるまま
僕は家を飛び出した
開けた窓から見ていたのさ 大きな黄金色の満月
ボロ自転車で行こう
悲しみは 悲しみのままで
切なさは 切なさのままで
変われない僕を万華鏡のように見せる
ふわっと生まれた
声に 振り返ると
もうこんな季節です
なんてことのない
いつもの夜なのに
ただひとついつもと違うのは なぜだろう 今夜は明日に期待できそうなんだ
ペダルを漕いで 行けるところまで行こう
車輪は回る
クレーターが よく見える 月面に降り立った飛行士のよう
無重力になったみたいに心が軽い。