詩人:どるとる | [投票][編集] |
糸を紡いでゆく きれいな螺旋になる
六角形の家を 糸だけでつくる
その八本の便利な手足で
虫じゃないよ 六本足の虫じゃないよ
蜘蛛は てらてらの
夜明けに輝く巣の真ん中で
そのたくさんの瞳で何を見てる。
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街中に音符の雨が 降っている
ドシラソファミレド 人の足音も 話し声も
それは素敵なメロディ
涙が 地面に落ちるまでの間に
僕はそっと君の 涙を手のひらで
こぼさず掬い上げたいのに
物語に そっと雨が降り注いで
レコードの針 落とすように 音が溢れる
悲しいよって 言っているように聞こえたの
少し遅れて差し出す手が 傘を握らせるけど
君は敢えなく涙に濡れてしまう。
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波にさらわれてゆく
ひと欠片の命が たどる足跡を 雨が消してく
さよならも 輝いて
手を振る影が 遠くなって
明日にはまた 側にいる大切な人。
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覚めた夢のあとにもまだ消えない
あなたの面影が 寄り添っているよ
時間から 外れた場所で生きる
あなたの 笑顔を思いながら
色彩の雨は モノクロを塗りつぶしてく
それは波にさらわれた貝殻の模様
どしゃ降りが 窓をはげしくたたく
さよならもどこか優しく頬を流れる
海を渡る 椰子の実ひとつ 宛もなくさまよう
白い砂浜 大きなパラソル 空と海の青。
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近づくでもなく 離れるでもない感覚で
歩幅は狭くなったり広がったりする
波紋みたいで 思わず笑ってしまうよ
ただの会話も交わしたそばから物語
金木犀の香るなだらかな坂道は
ゆるやかに 空の果てまで続く
坂道を降りたところの 小さな喫茶店
君は珈琲よりもメロンソーダ 子供みたいだね
饒舌でもなく かといって寡黙でもない
話が上手いわけでもないから退屈もする
でもそんな退屈までちょうどいい間
小説の行間のようなちょっとした息抜き
いつの間にかどちらからともなく差し出した手を つないでる
手と手で結ぶ 少し不恰好な蝶々結び
隙間もないくらいに 互いを思う気持ちで満たされてる
積み重ねてく 日々は積み木みたいだ
ジェンガみたいにさ所々 出っぱって
今にも崩れそうだ だけど絶妙なバランスで うまい具合に立っている
金木犀の香るなだらかな坂道は
ゆるやかに 空の果てまで続く
坂道を降りたところの 小さな喫茶店
君は珈琲よりもメロンソーダ 子供みたいだね。
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数センチの間をあけて歩く歩道に
わざと置き忘れられたように
花びらがたくさん落ちている
春がまだ少し夏にはまだ早いよと言うように
その一歩から どこまで行けるだろう
僕らはただ一歩一歩つないでゆく 気の遠くなるような地道な努力 つつましやかな頑張り
春はもうじきこの街をあとにして
桜も来年までもう見られないね
あんなに 寒かったはずの街も もう
薄いシャツ一枚で 歩けるよ
足跡は 続いてゆく僕らが歩いた道に
これは誰の足跡だろう 思いの外、真新しい
宛のない想像は 真っ白な画用紙に
夢を描いて 間違わないように
引いたレールの上をたどってゆく
たまには 無謀にもなるさ 狡さも必要 優しくなんかないよ
これが物語なら ページをめくるたび
あらすじ通りの結末を目指すのに
どうやら僕らの毎日には そんな便利な近道は ないようで
だから途方に暮れてしまう
ポケットにしまったままの夢
なくしたことにして見ないふりしてる
こっそり 取り出して眺めては
涙なんか流したりしてる僕がいる
風はどこに 吹いてゆく 足跡も残さずに
見上げた空に 星がひとつ 願いは届くかな
離れたり 近づいたりする歩幅
強がるふりして 寂しがる
隠した 涙は正直で気づけば
素直になって 君の姿を探してる
名前を呼んだりしたら 来てくれるかな
頼りなくて丸まった背中をさらに丸ませて
春はもうじきこの街をあとにして
桜も来年までもう見られないね
あんなに 寒かったはずの街も もう
薄いシャツ一枚で 歩けるよ
足跡は 続いてゆく僕らが歩いた道に
これは誰の足跡だろう 思いの外、真新しい。
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空から落ちてきた 雨の一粒を
上手に 手のひらにのせてもてあそぶ
手を離した瞬間に ほどけてゆく温もりが
新しい物語を求めて明日に駆け出してく
スプーン一杯ぶんの退屈を 飽きるまで
堪能したあとに 押し寄せる浅い微睡みを
つまらない ため息で終わらせないで
せめてこの命尽きるまで消えないロマンスになれ
シュガーとソルトふりかけて
スポンジの上に降らせるメレンゲの雨
めまいを起こしそうな まばゆい光
頭の中まで極彩色に埋め尽くされてゆく
スプーン一杯ぶんの退屈を 飽きるまで
堪能したあとに 押し寄せる浅い微睡みを
つまらない ため息で終わらせないで
せめてこの命尽きるまで消えないロマンスになれ
悲しみを覆い隠してしまえ。
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なんでもない顔で でも君は悲しみを
一人では到底持ちきれないほど抱えてて
それを強がって 言おうとしないから
僕はまた 君につらくあたってしまうんだ
桜も終わりだね もう陽射しも夏の色さ
歩幅を無理やり合わせていたけど
当然のように少しずつ離れてゆく
僕と君の間には 埋められない距離ができたよ
君も僕を愛してきた
僕も君を愛してきた
でもいつの間にか
違うものを見ていたよ
終わりにしようね こんな悲しい恋は
どちらからともなく 離した手
遠ざかる背中を僕はただ 見送っていた
たくさんの言い訳を好きなだけ並べたら
消化しきれずに残してしまったんだ
無理やり食べたらきっとお腹を壊すね
だから聞かなかったことにしたんだよ
坂道は続いていく空を目指すように
君を乗せたバスはもう来ないだろう
でもわかってるのに来てしまうバス停
僕と君の間にできた距離を埋める魔法はないかなあ
君の好きなところ 数えたら きりがないけど
君は自分を好きになれないと よく泣いた
今でも何が 二人の間を引き裂いたのかわからない
君とつないでた手を見つめながら
気持ちとは裏腹に青い空を見上げていた
飛行機雲が すぅーっと横切ってゆく
君がいたら こんななんでもない場面も
映画でいう名シーンに変わるのかなあ
なんてことを思いなぎら煙草をもみ消す
君も僕を愛してきた
僕も君を愛してきた
でもいつの間にか
違うものを見ていたよ
終わりにしようね こんな悲しい恋は
どちらからともなく 離した手
遠ざかる背中を僕はただ 見送っていた。
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それでも散ってしまうのです
指折り数えても 幾ばくもない命
窓の外を 過ぎる駅前通りの景色
たくさんの人だかりに紛れて
建物の向こうに夕日が 沈むのを見た
春の終わりに桜が散ってゆくように
君の命も それまで持つかなあ
静かな病室に 二人の影が落ちて
涙も流さず笑う 君を僕はただ見ていた
春ももうじき終わりだね 最後の桜が散る。
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さあ 帰ろうかと差し出す手を
小さな手が 握り返した
その手の持ち主はにっこりと笑いながら
今晩の献立をママに聞くのです
何もかもが幸せだった気がした
ひとつひとつ思い出していたその理由を
君の瞳を僕は見ていたよ 潤んだようなその目の向こうに
夕暮れの街が 揺れている
お腹がなったから ここからは駆け足。