詩人:どるとる | [投票][得票][編集] |
電信柱の物陰で
背中 丸めて
ひとり泣いている
ちいさないつかの少年
もう 夕方の五時を回ったというのにまだ明るいのは季節が変わったからかな
散らかりっぱなしの部屋には いくつものダンボール
整理も何もしていない だらしない部屋
思い出は日を追うにしたがって
意味のないものに変わっていくようで悲しい
友達といえる友達も
彼女といえる人も
何もいない
ふと我に返ったように気づけばひとりぼっち
こんな 夕暮れの中
むせるような真っ赤な空を眺めている
繰り返してきた過ちと
また繰り返してしまいそうな予感
引き連れてきたのは侘びしさに むなしさが乗っかっただけのモノクロの未来
あんな 顔で 笑ってたっけ
幼いころの僕
アルバム開かなくても ほら いつもの帰り道の途中にある電信柱の陰からこちらをうかがってるよ
思い出にまで
心配されているようで
なんだか久しぶりに
胸が熱くなって
泣きたくなったよ
声をあげずにふるえる 僕は 電信柱の物陰で子供のように涙の粒をアスファルトに落として 俯き泣いていた
悲しいのはなんなんですか?
どうしてあなたは生きてるのですか?
矢継ぎ早に問いかけられる 聞こえるはずもない疑問の声
ああ 今 その全てにこたえることは難しいな
逃げるわけじゃないけど今は 心苦しくも黙らせてもらうよ
夕暮れが 弱々しくさよなら告げるように見えたのは 夕闇にのまれる瞬間だった気がするよ
そしてこんな風に
僕は繰り返してゆく
甲斐性のない生活を
だらしない毎日を
散らかりっぱなしのこの部屋のように溢れかえった いくつもの ため息
ほら 今 僕は欠けた月に照らされて
夜風に 吹かれ
おもむろに目を閉じてみる
自転車のペダル漕ぐように
ほら ゆっくりと
夜は朝へと向かい走り出す
太陽が また ここに戻ってくるまで
夢でも見よう。