詩人:どるとる | [投票][得票][編集] |
なにもない
夢も知恵もない
ロマンも優しさもない
協調性も愛想もない
からっぽの僕には
からっぽの心があり
からっぽの目玉で見る世界はいまだ白黒
夢かジョーダンのような人生だから
夢かジョーダンのように終わればいい
僕の中には探しても
何もないよといつも
人ごみを避けて
静かな路地裏に
逃げ込んでいた
心のエンジンは
エンストして
広い砂漠の真ん中で
立ち往生しているよ
からっぽの世界には
からっぽの美があり
からっぽの僕に幾ばくかの喜びを抱かせてくれる
日々はいつまでも
懲りなく
変わりない
僕に天罰を与えることもなく ありふれていて満ち足りた幸せがどこまでも続いているだけ
なにもない
そう思いこんでた
世界だけど
背が伸びたように
ほら塀に阻まれていた向こう側の世界をのぞけばまるで綺麗だったよ
あの頃の僕ではわかり得なかった世界の横顔が今ならわかるよ
ただありふれた夕暮れも
ただありふれた微笑みも
その日にしかない
またとない光を放ってる
だから僕は少しくらいさみしくても笑い話に変えてさ
暗い気持ちに落ち込むよりずっと悲しみから目をそらして
見える美しい景色に見とれるよ
涙は流れるけれど
いつまでも泣いてなんかいられないから
お気楽なからっぽの僕で 都合よく忘れてしまえばいいんだ
風に吹かれていればいいんだ
からっぽの時間に注がれてゆく光の砂
砂時計がやがて落ちたら もう二度とやり直せない
だから人は一度きりの輝きを 求める
そして今日もあたりまえのような顔をして
さりげなく終わる1日
声くらいかけてくれてもいいのに
いつも1日はなんの言葉もなく 僕の目の届かないとこへ消えてく
何もかも片付いたあとのからっぽの僕と心のおおよそを占める切なさだけを残したまま
だんだん 闇に包まれる世界
死んだように静かだ。