詩人:どるとる | [投票][編集] |
『生きる意味が突然わからなくなった。
完全に自分を見失った。だからだからあの世へ先に逝きます。』
そう書き遺して
彼は旅立った
明けることのない
永遠の夜の世界へ
人の考えはいつも
見事なまでに交差して なかなか重ならないね
君と僕の意見は食い違ってばかりだった
君の全てをわかってたようで肝心なことはわかってなかったみたいだ
およそ地面との距離 ざっと150メートル
そこから落ちたら
完璧に死ねるね
だから君は死んだんだよね
君がこの世界に残したものは何もないよ
君がこの世界で生きていた証は 君が最期に書き遺したこの遺書だけ
でもそんなものは
残された僕には忌むべき ものにしかならないのさ
どうして僕は君の隠してるさびしさに気づいてあげられなかったんだろう
どうして君は近くにいる僕に話してくれなかったんだろう
150メートル離れた
このビルの屋上で
僕も上から下を眺めてみたけど 僕には高すぎる 距離だった
君と僕との距離も
このくらいあったのかな
でも愛していたよ
誰より何より
でも死んでしまった
今では何ひとつ無駄だよ
彼の遺書はたとえ燃やしたって僕の心にずっとずっと遺りつづける
彼の死んだこのビルから僕は空を見上げ
彼につぶやいた
ねえ なぜ君は死を選んだの?
今もわからないよ
死んでも
埋まらないこの距離
僕も死ねばわかるのかな?
僕は君のなんだったのかな?
君と僕との見ていた世界その差150メートル。