詩人:どるとる | [投票][編集] |
おばあさんと犬があるところに暮らしていて おばあさん一人と犬一匹で毎日楽しく笑いあっていた
おばあさんはいつも
ひとりぼっちだから
孫にも息子にも恵まれなかったから
おばあさんの生きがいは犬だけだった
なにをするにも犬と一緒だったよ
早くにおじいさんに先立たれたおばあさんはひとりぼっちでここまで歩いてきたんだ
やがて犬を飼い始めてさ 最初はなかなか懐いてくれなかったけど少しずつ距離が縮んでいったのです
ある雨の日の朝におばあさんはひとり息をひきとったんだ
それでもおばあさんが亡くなったことを知らない犬はずっと
おばあさんの部屋がある 窓に向かって
優しい眼差しで語りかけるように
鳴いていた
ずっと待ってるからとでも言うように
犬はおばあさんを待ち続ける
寒い冬も暑い夏も
おだやかな春の日も
ずっと待ってるから
犬はやがて静かに冷たくなっていた
おばあさんを待ち続けて眠るように
おばあさんの待つ天国へ旅立った
犬は天国でおばあさんと会えたかな
今も空の上
雲の果ての果て
天の国には
あの犬のかわいらしい鳴き声とおばあさんの優しい眼差しがあることを祈って
売り地になったおばあさんの家は やがて更地になって
何もなくなったけど
それでもおばあさんと犬の暮らしていた記憶は残ってる
そんな気がするんだ
どこかで犬の鳴き声
僕は思い出すよ
おばあさんと犬の物語。