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どるとるの部屋


[2795] もうひとつの夏
詩人:どるとる [投票][編集]


5月、雨上がりの街爽やかな空気に包まれて
冷気を吸い込んだアスファルトが 夏の熱を冷ましてゆく

僕らは風鈴の音色を聴きながら いつの間にか夢の中 汗ばんだ午後縁側で見た夏の夢ひらり

淡雪のように溶けていく 僕の首筋を伝う汗さえも引いてゆくとなんだかどこか悲しくて 恋しくて
もう一度見たくなるよ
寝苦しい夜も笑っていられた蚊帳の中で見る夏の夢

どうしてだろう

意識さえも溶けてしまうほど暑い暑い夏なのにねなぜか嫌いになれないんだよ
みんなで楽しんだ花火も 賑やかな街のお祭りも 友達と行った釣りもキャンプも
思い出が美しすぎるから僕は忘れられない

幼い時の記憶とはもうだいぶかけ離れた
ただ暑いだけでそれに必死で耐えるだけの大人の僕の頭の中で今も輝いてる
自転車のペダルが回り続けて いくつかのカーブをむかえ たどり着いたこの夏も
きっと あの頃に負けをとらないような素敵な夏があるはずだから 探しに行きたいロマンチックな僕だよ

探してる夏はどこだい? 教えて 教えて

ネクタイもスーツも
革靴も パソコンも
携帯電話も 何もかも置き去りにして
会いに行きたい夏がある
僕が昔からずっと探してる 夏があるんだよ

きっとそれは蝉しぐれと共に僕らの心の中に訪れる もうひとつの夏

涼風に揺れる 風鈴の音色が聴こえる
ほらね夏がやって来ました 暑中見舞いも冷えたスイカも要らないからね
僕の元にもう一度
訪れておくれ
もうひとつの夏

それは幼い昔
僕がそこにいたことが当たり前だった
特別なことなどなにもなかったけど
ただそこにいるだけですべて夏を余すことなく感じられたような 夏の夢を見ていたんだよ 僕らは…

特別なことなんて
なにもなくていいから
今年こそ あの頃のような夏が来るといいな

縁側から見える庭に咲く 黄色いひまわりも朝顔も 凛として
僕が笑うのを待ってる。

2011/05/04 (Wed)

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