ホーム > 詩人の部屋 > どるとるの部屋 > 夏の冒険

どるとるの部屋


[3096] 夏の冒険
詩人:どるとる [投票][編集]


少年はひとり
旅に出ました
ある七月の朝

重たいカバンを背負い自転車で出かけた

行く先や宛てもなく
好奇心だけで始まった旅だ 不安じゃないはずはない

何もない世界に嫌気がさしても どこに逃げようがこの世界は丸いからまた同じ場所に行き着いてしまう
それならば見つけよう
僕だけに見える青空

宿題の 真っ白い画用紙に描く どこまでも青い空と白い雲
上手くは描けなくても 僕だけのたったひと夏の記憶閉じ込めた 一枚の絵
空と大地の境界線すらわからなくなるほど青々とした僕の世界
もう少しペダルを漕いで 生きていこう
投げ出すことなら多分いつだってできると思うから
ダメ元だって
旅に出た少年の日の夏

うだるような暑い陽射しとどこまでも追いかけてくるように
鳴き続ける蝉しぐれ

思い出すよ 夏の冒険
ひと夏の 大冒険

汗とともに暑さが引いてゆくように
夏の幻に魅せられて
気づけばエアコンのきいた部屋に返り咲いたこと 内緒だよ

でもいい絵が描けたんだ
大人になった今
またあんな旅がしたいな

少年の瞳に映った
青い空が画用紙いっぱいに広がるような
そんな夏

画用紙にはおさまりきれないたくさんの思い出がきらめく夏

思い出すよ 夏の冒険

ひと夏だけの 大冒険

ペダルを漕ぐように
果てのない世界を目指した 少年の見た夢

神様がくれた暑い夏。

2011/07/23 (Sat)

前頁] [どるとるの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -