詩人:どるとる | [投票][編集] |
どこにでもあるようで
ここにしかない夏
抱きしめて
受け止めて
何度でも
切れた鼻緒を
結びなおすように
思い出せば
鳴き出す
蝉しぐれ
あなたと見たあの花火が あの提灯の明かりが 振り向けばきのうのように今も鮮やかに思い出せる
遠いあの夏にまた僕はかえりたいよ
できることならば
子供に戻ってお祭りの屋台に飛びついて
プールで思い切り
遊ぶのもいいね
大人には見えない夏が子供には見える
すこし開けた窓から
吹き込む夏の風
ほほをやさしく撫でるその風が風鈴を鳴らすよ
魔法の呪文のように毎年のようにみんな暑いなってわかってても言葉にしている
そしてきこえる
蝉しぐれ
どこにでもあるようで
いちどしかない夏
あの夏はきっと
かえらない
でもまた夏が今年も
暑さとともに
やってくる
けたたましいくらいに鳴く蝉も短命だから その生涯を嘆くように鳴いている
ああ 振り向けば
微笑んだ君のほほに流れる汗と 気品に満ちたうなじかな
ほらね 夏もいいだろう?狂おしいほどの暑さが 夏を思い出させてくれるよ
そして蝉しぐれが鳴り止むころに
暑さとともに去り行く夏 抜け殻だけを残したまま
風と共に去りぬ。