詩人:どるとる | [投票][得票][編集] |
引き出しの中から
未来のロボットが
いろんな道具で
夢を叶えてくれる
そんな夢みたいな
漫画が大好きだった
幼い僕の瞳には何が映っていたんだろう
いじめられても
からかわれても
いつだって将来結婚する大好きなあの子のために僕は悲しくても平気な顔で笑っていた
度の強い丸メガネをかけた少年の勇気をまねしようと思っても 僕はのび太くんにはなれない
ママにはしかられてばっかでテストはいつも0点で でも優しさと勇気だけは 人一倍あったのに
ねえ助けてよ ドラえもん なんでもできる万能の四次元ポケットから 僕の夢を叶える道具を出してよ
引き出しの中にある未来へも過去へも行ける君が乗ってきた旧式のお座敷型タイムマシーンで
いろんな冒険をした
漫画の中じゃ 楽しい冒険ばかり 繰り広げられたけど 僕の机の引き出しを開けてみてもただの引き出しなのさ
1秒前の過去でさえ戻ることはできない
そして未来はわからない
でも思うよ
わからないからこそ未来は楽しくなるんだって
僕の中の素敵な夢の世界は嘘なんだけど
きっと幻ではなく 願い続ければ叶う夢のように いつか夢見ていたことが 大人になって忙しくて仕方ないとき ふと気づくと僕を戒める素敵なきっかけになるんだ
ねえ僕の僕だけのドラえもん 会いたいけど 押し入れの中で君はこう言うのだろう
僕はいないけど
君が望むなら
君の中で 優しく微笑むよりリアルな幻になって いつまでも君の友達でいてあげるよ
のび太くんにはなれなかったけど 憧れだけがいつまでも鮮やかに僕を夢の世界に誘うんだ
のび太くんになりたかった僕へ
僕の中のドラえもんはそっと微笑む
輝きとロマンに満ちた本当の22世紀はいつか君を迎えに来るよ
そうだろう?
僕はうなずいたんだ
そして引き出しをそっと閉めて
ドラえもんに手を振り 僕はこみ上げる涙を拭った。