詩人:どるとる | [投票][得票][編集] |
あるところに 世界一の名画を描こうとしている 名無しの画家がおりました
でも世界一の絵ってどんな絵なのかな
とりあえず描いてみた絵は世界一にはほど遠そう
芸術っていうのは人がまねできないような 奇跡と並び立つような ものをいうんだろう それはいわば神の創りし精巧な創作物
殺風景な部屋の中に
誰かが描いた 名画
あれもこれも 大した作品じゃないような気がするけど 名画といわれりゃそんな気もする
ピカソだって
モネだって
マチスだって
モディリアーニだって
ああ ただ自分の思うように描いていただけじゃないか
僕だって自分の思うように描いたらそれが名画なんじゃない
様々な技法や テクニックなんかよりずっと
素直なまま 心のままに 描いた絵が 名画なんじゃないかって思うんだよ
名画とはつまりだね
心で描いたなんでもない絵のこと
だけどなんの価値もないけど 値段がつけられないほどそれは素敵な素敵な名画なんだ
誰にでも描けるわけじゃないけど
誰もが描くことをゆるされる
人生という名画
ほらね 歪んだ自画像だって それも君の心を映し出した本当の姿だろう
だけど 優しく微笑むあたたかな自画像だってあるはずだから
ひとつにこだわらず
これからも
明日もずっと
あなたを自分という人間の長い長い人生を描く 画家だ
人生という名画を
描く 画家だ
さあ筆を握って
涙さえ 偽らず
描くのさ
真っ白なキャンバスがいつの日か もうこれ以上描ききれなくなるまで。