ホーム > 詩人の部屋 > どるとるの部屋 > 幻のような夏

どるとるの部屋


[4116] 幻のような夏
詩人:どるとる [投票][編集]


なぜだか 悲しくて
涙が止まらないんだ
何もないのに 生きているだけで

なぜだか胸が痛い
笑いが止まらないよ
当たり前な日々の中
生まれる調和

蝉しぐれの中を ひとり僕は行く 長い長い坂道をこれからいくつもむかえる

ほんの少し ほほに流れ伝う汗をぬぐって
ふと日陰に逃げ込み
吹きつける風の中
目を閉じて 見えないものへの興味や聴こえないものへの感心をひくんだよ

泣きそうな声で 笑い出しそうな表情で 僕は全身全霊で 生きる喜びや悲しみを受け止める

いいさ、誰にも僕の全てわかってもらえなくても

日が落ちてゆく
空が橙に染まり
やがて、訪れる夜

うつせみさ
まぼろしさ

このからだ灼く陽射しも絶え間なく流れる汗も

嘘のように消えてゆく

僕らは夢を見てる
幻のような夏だね
でもまだ見始めたばかり

蝉たちが歌う歌が聞こえなくなるまで
暑さもあのアスファルトに見える逃げ水も朝昼晩とつづく冷や麦もしばらくはつづく

幻のような夏だったね
そんな心に変わるまで。

2012/08/05 (Sun)

前頁] [どるとるの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -