詩人:どるとる | [投票][得票][編集] |
ある日少女は泣いていた
生まれてきたことへの喜びに
ある日少女は泣いていた
生まれてきてしまったことへの悲しみに
そんなことの繰り返しの中で 人は育つものだと誰かが言う
少女はまだ幼い瞳の奥に小さな世界の一部を見ていた
少女が見渡せる限りの世界には 悲しみも喜びも幸せもあるのに 欲望がそれを許さない
少女にはやがて恋人もできて 世界中を旅をして たくさんの人に巡り会ううちに少女の中の世界は広がった
そんな少女の人生は
つかの間のうちに終わるけれど 少女はきっと忘れない
だから僕も笑おう
生きる悲しみを背負いながらも懸命に生きていた少女のように
なぜか少女は目を閉じて
いつまでも言葉をしまったまま
なにも言わない
そうだね、天国へ旅立ったんだ
残された僕は少女の生きた半生をなんとはなく思いながら
生きる悲しみや
生きる喜びに
涙を流すだろう
だけれどけっしてどんな辛いときでも
僕は生きることだけは忘れない
少女がそうしてきたように
僕も懸命に生きるから。