詩人:どるとる | [投票][編集] |
はじめての恋をしたのはある晴れた春の午後でした
教室の窓際の席の彼女がそうなんです
実はね
ちょっとだけの恥じらいとちょっとだけの感動を抱え込んだ僕の心
まるで何かの病気みたいに動悸がおさまらない毎日をどうにかこうにか過ごした
恋をしらない初心者同然の心に突然おとずれた春
苦しい痛みもなぜかどこか愛しい痛みに思えて
繰り返し続いてゆく日々が今咲いたばかりの花のように
薄紅色に色づいて
淡く美しく僕の中にそっとそっと咲いたんだ
用心深いこの僕でさえも気づかない間に
君は僕の心をその笑顔で射抜いた
片思いだから君は何もしてやしないんだけど恋とはいつもそういうものらしいんだ
あっちに気がなくてもこっちが勝手に萌えてしまうんだ
あの日の僕のようにね
ほら なすすべもないまま
信じられないくらい君は華麗かつ大胆に
僕の手つかずの心を慣れた手つきで盗んで行った
まるで僕のすべてを知っているかのように
恋という乱気流にぶつかった僕はなんの準備もできないまま
ただ流されるように
ただ流されるままに
虜になって君に見とれてばかりいた
だけれどその張本人はなんの音さたもなくて
さすが恋泥棒と呼ばれるだけあってあまるほどの貫禄と威厳をもっていたよ
そんな君の笑顔にそんな君のしぐさに
僕の心は貫かれたんだな
君が何気なく打ちはなったキューピットの矢よりもずっと鋭く尖った愛が僕をたやすく射止めたんだ
そんな春の思い出
遠く遠く思い出してみればちょっとは切なかったり悲しくなるけれど
初恋というものは元来そういうものというらしい
隣に君はもちろんいないけれど
空の果てからしたたり落ちる雨音がなぜかやさしく聞こえたんだ
だからねあの日の恋そんな気持ちに変わるまでのちょっとした痛みに過ぎないんだね
でもね本当に僕はジョーダンじゃなくて君を好きだった
心から。