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どるとるの部屋


[5859] ひとりにひとつ
詩人:どるとる [投票][編集]

たったひとつの命を
たったひとつの命が
生み出し育む
そんな波のような繰り返しの中
たったひとりの私と
たったひとりのあなたが
恋をして愛し合い
そして生まれるたったひとりの人
何度でも何度でも寄せては返しながら
浜辺へと流れてく小さな貝殻
また時が流れて 波にのまれていく

ひとりにひとつ与えられている命
それは思うよりもかけがえのない命
君はこの世にひとり
僕もこの世にひとり
それは思うよりも
すてきなことだろう
すてきなことだろう

たったひとつの命が
たったひとつの命に
重なり合えばまたひとつの命になる
たったひとりの私も
たったひとりのあなたも
たったひとつの世界の中のたったひとり
何度でも何度でも 行っては来て
長い旅から帰った旅人は命を持ち帰る

ひとりにひとつ 許されている時間
それは誰にも等しく同じだけの時間
少しだけ遅かったり
少しだけ早かったり
すれ違うけれど
誰のせいにも出来ない
なんのせいにも出来ない

たとえば 沈む夕日を見つめる瞳の中に
たとえば 誰かとつなぐ手のぬくもりの中に
たとえば こうして 歌を歌う声の中に
目には見えない暗闇の中耳にも聞こえないような無音の中に
それはそっと紛れているんだろう

ありふれたひとつだけを僕らはひとつだけ持っている

ひとりにひとつ与えられている命
それは思うよりもかけがえのない命
君はこの世にひとり
僕もこの世にひとり
それは思うよりも
すてきなことだろう
すてきなことだろう

僕はいつまでも忘れないだろう
たったひとつの命が燃え尽きても
残されたたったひとりの誰かが
僕の命を 覚えててくれるのなら。

2014/10/06 (Mon)

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