詩人:どるとる | [投票][編集] |
それはまるで思い出の中に 咲いた花
それはまるで瞼の裏に広がる小宇宙
読みかけのままで放り投げた本の続き
その向こうにあったはずの知らない世界
光と戯れながら 影はゆらゆら揺れて
きのうまでの悲しみをそっと指でなぞる
忘れられた いくつかの記憶とその片隅に
ひそやかに たたずむうすぼんやりとした
真っ白な画用紙の隅っこでのたうち回る死にぞこないの夢
すべてのはじまりからすべてのさよならまで
味わって 飲み干して 余韻まで たのしんだら
あとはただ 骨になって 灰になって
跡形もなくなって
僕の世界はもう
僕のものじゃない
君の世界は もう
君のものじゃない
そして 誰のものでもなくなった世界は
いつまでもただそこにあるだけ。