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どるとるの部屋


[6151] 風の名前
詩人:どるとる [投票][編集]


目には見えないものでも名前があれば
見失うことなんてないのに

たとえば僕らが抱く気持ちのすぐ隣に
寄り添うように名前があればいいのに

そこにある 確かにある かけがえのないいくつものひとつひとつ
呼んでごらん

呼びかける名前もないけど それは僕らにしたって同じだ
風のような あやふやな命に 名前をつけて 区別しているに過ぎない

耳には聞こえない 心の声は
なんとなく 気づくほかはない
なにせ 気持ちなんてものは聞くものじゃなく
感じるものだと僕らは知ってるから

ぬくもりひとつ 手のひらに乗せて これが宝物だって
言えないのが 悔しいんだよ

僕らを包み込むふいに吹く風に名前なんてないんだ
通り過ぎてくだけの時間の中を 吹き抜けてく僕らも風のようなものだから

夕暮れ 誰もいない
道に あなたの影が揺れる
どうしてだろう 答えなんか見えなくても
そのぬくもり それだけでお腹いっぱいさ

呼びかける名前もないけど それは僕らにしたって同じだ
風のような あやふやな命に 名前をつけて 区別しているに過ぎない

ならば あとからつけたその名前を 抱いたまま この道を吹き抜けていく風になろう。

2015/03/14 (Sat)

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