詩人:どるとる | [投票][編集] |
波が 押し寄せては引いてゆくような
時間の満ち引きは 人の生き死にの形
誰かのかつての暮らしが瞼の裏に 映る
笑い声も泣き声も重ねた手のひらも
何気なくて 何でもない日常がすべて
思い出と呼べるものをひとつひとつ
数えては 刻み込むんだよ胸の一番奥にしまっている ひとりにひとつのヒストリー
目を閉じて また開くように
瞬く間に過ぎてく あっという間のストーリー
交わした口づけの数も覚えている
つないだ手のあたたかさも覚えている
いつかそれもすべて忘れてしまうんだろうか
ほどけていく記憶の靴紐を また結び直して いつもは通りすぎるだけの景色に重ねている愛しい痛み
歩きだして 立ち止まるとき
気づいた 暮れていく空の色が
こんなにきれいだったこと
しばらく忘れていた
見とれてしまうほどに
思い出と呼べるものをひとつひとつ
数えては 刻み込むんだよ胸の一番奥にしまっている ひとりにひとつのヒストリー淡く はかない 朝焼け色のヒストリー。