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どるとるの部屋


[7601] 夢見人たちの秘密基地
詩人:どるとる [投票][編集]


僕らの七日間戦争を読んでいた頃に
世界のすべてはラジコンみたいに
手のひらで自由に動かせたよ

特撮怪獣映画のパンフレット
学研の地球儀
お菓子のおまけ
数ある宝物 今ではどこにあるのかもわからない

あの日探してた 明日なんて来ないくらい 長い長い夏休み
追いかけたよ流れ雲のあとを
カゴいっぱいのかぶと虫
逃げ込んだ日陰の中で
広げた 僕らの未来の設計図
間違いなどなかったのに
いつの間にかそれよりも大切なものを 見つけてしまったよ

長い神社の急な十何段ある階段を
軽々上れた日に 雷と雨から逃げ出して
雨宿りした 蝉時雨聞きながら

絵日記に描いた 下手くそな絵
海と地面の境目の曖昧なラインを
気にさせずにいたのは フラッシュバックする思い出

田んぼばかりが続く畦道を 駆けずり回って
自転車転がして どこにでも行った
急な雨に濡れる ことも気にも止めず
笑い倒した 夜の庭で
みんなでやった花火
線香花火が落ちて闇がまた広がる
その時いつもそばにあった夏が少しだけ僕から遠ざかった

瞼の裏の真っ白な スクリーンに
あの日を映し出してみよう
おぼろ気でモノクロな記憶に
あざやかな色を 取り戻してくれるのは
この街の変わらない風の匂い

あの日探してた 僕らは長い長い 夏休み
追いかけたよ流れ雲のあとを
カゴいっぱいのかぶと虫
逃げ込んだ日陰の中で
広げた 僕らの未来の設計図
間違いなどなかったのに
いつの間にかそれよりも大切なものを 見つけてしまったよ

大人になった とたんに見えなくなったものができたよ

思い出の中に心ひとつ忘れ物をしてきてしまったよ。

2016/04/08 (Fri)

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