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どるとるの部屋


[7949] 旅立ちの日
詩人:どるとる [投票][編集]


旅立つことを決めた君の瞳には
もう迷いは 少しも見えなかったよ

その日は朝からあいにくの雨で
泣けない僕の代わりに空が泣いていた

あとどれくらいで電車は来るんだろう
時刻表と時計を 何度も確かめた

ホームに流れるのは二人だけの時間
数分の永遠でも幸せだったはずだよ

結び目がほどけてくように
つないだ手が するりと離れていく

悲しくはないよ でも素直には
喜べない 僕がいることを許してね

遠ざかる電車が見えなくなるまで
手を振りながら ささやくのは

「さよなら」ではなく「また会おう」の言葉
いつかきっと 今日と同じ日に出会えるように

ゆっくり歩いているつもりでも
季節は 先を急ぐように過ぎていったね

君の好きな食べ物 好きな服 好きな場所
全部は思い出せないのはなぜだろう

それはきっと思い出が沢山あるから
歩道橋の上から見下ろす街は夕暮れ

同じ歩幅で歩いてたつもりだったけど
いつの間にか君は僕より先を歩いてた

君は叶えたい夢を 見つけたんだね
僕も僕の夢を 探しに行こう

君がいなくても どうにか頑張ってる
いつまでも君と一緒じゃ強くはなれない

だから あの日のさよならは 僕が大人になるために必要なさよならだったんだ

「守られる」のではなく「守れる」人になりたい
いつか 君を振り向かせられるそんな僕になるよ

発車のベルが 鳴って だんだん遠ざかる電車の窓から
泣きながら手を振る君を見ていた
君の旅立ちは 僕の旅立ちでもあったよ

だから旅立ちの日に相応しいのは
別れを悲しむ気持ちではなく いつか出会えることを 信じる気持ちだ

だからさよならは いらないよ
いつか今日と同じ日に 笑顔で出会えるように。

2016/06/12 (Sun)

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