詩人:どるとる | [投票][編集] |
線路沿いのアパート 電車が通るたび
がたがた窓が鳴って
共同トイレ 風呂なし 月8000円の暮らし
覚えたてのフォークギターで
歌ったのは吉田拓郎 の 今日まで そして明日から
幸せは 六畳一間のあの部屋にきっと あったのだろう
割れた窓から 眺める 星空のきれいなこと
夕暮れには 橙の空が 街を見下ろしてる
君が作る 美味しいカレーライス
遠慮もしないで何杯もおかわりした
去年取り壊されてしまった
線路沿いのアパート
久しぶりに 来てみたら
大家さんも 歳をとってずいぶん老け込んでいた
レコードをかけた 部屋で 二人は 夢を見てた
幸せは お金では買えないことを 知っているから
庭でみんなでやったささやかなバーベキュー
スーパーの特売日に買った 3割引の豚肉
野菜ばかりだったけど 美味しかった
ほっぺが落ちるほど
今は 自分の家を持って それなりに暮らしているけど
あの頃のような幸せは 今ではもう手に入らない
貧しさの中には今は忘れられた本当の 幸せがあったから
割れた窓から 眺める 星空のきれいなこと
夕暮れには 橙の空が 街を見下ろしてる
君が作る 美味しいカレーライス
遠慮もしないで何杯もおかわりした
そうやって 思い出は少しずつ
消えてしまうんだね
でも心の中には ちゃんと残されてる
あの日、食べたカレーライスの味も小さな痛みも。