詩人:どるとる | [投票][編集] |
いつの間にか降り出した雪がちらほらと
どこまでも伸びた道に 白い絨毯を広げて
誰もが そわそわしながら待っていた
夜がついに やっとことさやって来たんだ
吐き出す息で 冷えきった手を温めて
凍えないように コートの襟をピンと立てた
壁に寄りかかって 見上げた夜空に
流れ星がひとつ 駆けていった
願い事は 言えなかったけれどいいんだ
待ち合わせてる 君に出会えれば
名前も知らない どこかの街で
なれそめも 知らない人たちが
恋に落ちて 手なんかつないだりして
クリスマスの夜を 思い思いに過ごしてる
サンタクロースはいるかいないか
わからないけど もしもいるならば
今夜くらいは奇跡を起こしてください
泣いてる暇もないくらい 笑って 過ごせたならいいな
大人になってからはクリスマスなんて
年末の忙しさに 忘れてしまったりする
カレンダーを見てやっと今日が
クリスマスイブだと気づくしまつで
いつもは受け取らないポケットティッシュ
出し抜けにメリークリスマスと 言われた
寒い中ティッシュを配って 白い息 吐き出すあの人にも恋人がいるのかな
だとしたら 仕事が終わったら 恋人に会いに行くのかな
段ボールいっぱいのティッシュ
その一つ一つにあるドラマ
受けとる人と受け取らない人
無視をする人や睨んでくる人
段ボールが空になる頃 恋人に電話を入れる
路地の陰に隠れて 会う約束を取り付ける
少し遅れるけど 走って行くから待ってて
そんな会話が イメージできてしまうんだよ
受け取ったその時の笑顔は きっと
恋人に会える嬉しさの あらわれだろう
だとしたらありがとうと 言うべきだったかな
なんてことを考えながら ティッシュで鼻をかむ夜
聞こえないけど 少し遅れてありがとうと寒空に呟いた。