詩人:けむり | [投票][編集] |
ああ…ごらん。人々が燃えていくよ。
まるでブロンズの彫像が溶けるように。
けれどその勢いは紙くずも同然だ!
「こっけいだナ。つまり無知は死に値する罪だということサ」
たくさんの人が業火に包まれているね。
燃え尽きていく体を振り回して。
「彼らは知っただけだよ。だがすでに手遅れってわけだ。なぜなら彼らは無知のまま生きてきたが、それぞれ、すでに足跡を残したからネ。真理に達した一冊の書物が人の世にこういう結果をもたらした」
まるで悔いる時も与えられていないようだ。
あっ、燃える母親につかまれて子供に火がうつった!
「んー…。それはつまり、あの子供はすでにこの世になれた者だということさ。贖罪(しょくざい)はすべからく与えられるべき者に与えられる」
ねえ、ごらんよ。あの人はぼくよりずいぶん無垢な顔をして、業火に…。
もしも、もっと後に気づく機会が与えられれば身をこがさずにすんだのかもしれない。
けれど平等に、時は『今』なんだね。
「文化だよ。人は誰しも真理を求めるものなのサ。いかに自分がソレにたどり着く道から外れてしまってもね。ちょうどたき火に蛾(ガ)が吸い寄せられていくのと似ている。…習性だ」
わかるよ。これはみんなが望んだ結果なんだ。
そしてこの『時』が来るのをぼくたちはみんな知っていた。
そしてぼくにも、きみにも、平等に犯したあやまちのつぐないは沸騰点を越えておとずれる。
手を…。
「いいよ。しょせんぼくたちは同罪だ。共に行こう」
きみが連れなら悪くないよ。
「光栄だな。だがぼくはきみのうめき声など聞きたくない。そのことはわかっていてくれ」
ぼくもさ。さあ、業火が足に届いたぞ。
「おそれるな。受け入れろ!」
わかっている。どうどうめぐりのばかし合いが終末を迎えるということだね。
「そう。そして始まりへ戻る」