詩人:けむり | [投票][編集] |
あの子はとっても美しいから
ぼくはあの子になりたくなった
だからあの子の鼻をもいで
ぼくの鼻に付けた
くちびるをはいで
ぼくのくちびるに付けた
目も耳もあの子のものをぼくのものにした
ぼくはあの子みたいになれた気がして嬉しかった
せっかく付けたのだから腐らないように
ぼくはあの子が考えそうなことを考えることにした
あの子が着そうな服を着ることにした
どんどんあの子に近づいている気がして楽しかった
だけどこの頃、なんだかぼくはぼくの顔がなつかしい
あの子みたいに振る舞うのは疲れるし
なにより飽きてきた
ぼくはあの子の鼻をもごうとした
困った
もげない
そうだ ぼくはいいことを考えた
昔のぼくに似ているパーツをいろんな奴から集めよう
そして六人から目やら鼻やらを失敬して
なんとかぼくは昔の面影を取り戻した
これなら家族もギリギリわかってくれるだろう
だけどまた困った
ぼくはどんな考えの持ち主だったのかわからないのだ
今度は昔のぼくに似た性格の奴を捜さないといけない