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けむりの部屋


[9] 落下点
詩人:けむり [投票][得票][編集]

風を切る音は気持ちよかった

生まれつきおろかにできているおれは
透明なかごの中で
飼われているのが似合いね

ああ ただ生きていたのに
あの子が他の女の子とは別ものに見えるから
一人ではいられなくなってしまった

切なくて体が震えてしまいます
首筋がほてる
淋しさのあぎとに喰われ
内ももがもだえる

恥ずかしい
なんて だらしがないんだ
女の子に心を奪われるなんて
みっともないったらありゃしないよ

はじを感じることが防壁を瓦解させる

夜風が気持ちよく冷たい
ベランダの適度な接地感のなさ
それは三途の岸辺にも似ているようだな
じきに訪れる静寂に満ちた闇
そこから聞こえる淋しげないざない

音  左胸の メトロノームよりも不安定な
ガラスが砕けるよりも耳障りな ア ア 淋しい
ただあの子を想うことがみじめで
心音のやるせなさをせない

風を切る音は気持ちよかった
おれ以外全部置き去りにする音なんだ
その速度  生という束縛からの解放であり
死という幕の享受 そこへたどり着くための速度

安らぎと妥協の合致点
成功と冒険心を計る天秤
弱さと罪の融合性

生を受け止めうるものは死だけであるとするならば
想いを受け止めうるものとは?

あの子は気づいてさえもいないんだろう

2007/07/23 (Mon)

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