詩人:halcyon | [投票][編集] |
開けっ放しの窓からは
冷たい風が入ってきた。
今は何時なんだろう。
部屋は真っ暗だった。
静かで、音がない。
なのに、遠くにぼうっと
光る高層ビルのネオンが
人の熱を感じさせた。
あそこではたくさんの人が忙しなく働いて、そして、生きている。わたしの知らない、知ることのないたくさんの人達が。そう考えると急に息が出来なくなった。気持ちが悪い。両手で口を塞ぎながら、トイレに駆け込んだ。ふらつきながらベッドに戻るとすぐ視界は暗転。
目をさますと、淡い橙の光が辺り一面を包んでいた。一瞬、ここがどこなのか
わからなくて、もしかしてとあなたを探した。
辺りをよく見渡すと昨日と同じベッドの上だということに気がついて、とても馬鹿らしくなり枕に倒れこんだ。空には雲ひとつない。窓の外にはいつもと変わらない朝の風景が広がっていた。横断歩道をランドセルを背負った子供が渡り、少し腰の曲がった老人が犬を連れてゆっくり歩いていく。赤信号で車が止まった。誰かの笑い声がする。
わたしにはそれが
全て耐え難いものだった。
それでも目が反らせないでいると、誰もいない歩道橋のに上にあなたの横顔を見つけた。空を見ているみたいだった。ちょっと間抜け面だったけれど、とても幸せそうだったのでわたしは急いで窓を開けた。
口を大きく開いたけれど、声が出なかった。
ただ会いにゆきたかった。力いっぱい抱きしめたかった。それでも無理だった。いくら願っても。
あっという間にあなたは
瞼の裏に溶けていった。
歩道橋には人の流れが
出来ていた。
ベッドがとても広いことに気がついた。
ぼうっとする事が多くなった。それから考え事も。
朝目が覚めるたび、
二度と朝なんてこなくて
いいのにとおもった。
夜が恋しかった。
月経が止まってもう5ヶ月と数週間が経つ。体が重くなったような気が、する。苦手だったフルーツが自然に食べられるようになった。代わりに紅茶の匂いには吐き気が。
トイレでショーツに
小さな赤い染みを見たのは翌朝のことだった。
涙が止まらなかった。
橙に包まれて泣いている
わたしのことなんて世界中の誰も知らないんだろう。わたしはただひたすらに、泣いた。
あなたが死んでから
もうすぐ、半年が経つよ
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あたしは確かに、
ほかのたくさんの女の子と比べたら変わっているかもしれない。少し、おかしいのかもしれない。
人の顔色を伺うこと、
感情を押し殺すこと、
作り笑いだって大得意だ。ひとりきりも平気。
辛いだなんてちっともおわない。
でも、何かの拍子にとても嬉しくなったり、ちょっとだけ泣いちゃったりすることもある。
そうゆう普通の女の子、
みたいなところだってちゃんとある。ちゃんともっている。
だから、それを知って、
そして大事にしてくれる
ひとがたったひとりでも
側にいてくれるだけで、
あたしは大丈夫なんだとおもう。生きていてよかったとおもう。心から。
あたしはしあわせだ。
そうおもうとき、わらってもいいのだろうか。
だって、
世界がきらきらしてる。
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っ、ん
…おまえどこでこんなキスの仕方覚えてきたんだよ
どこだとおもう?
わかんね
あ、おまえ、まさかおれ以外に…
あなたのパソコンのお気に入りに入ってる「無料ゲーム」っていうタイトルがついて今まで上手にカムフラージュされてたサイトの再生回数が1番多かったピンクナースの動画から抜粋
‥‥
きもちよかったでしょ?
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わたしがあなたを
すきなことは、
わたしが1番知っていた。でも、2番めはあなた
だったのかもしれない。
だから、その時誰もいない教室で壁を背にしと咄嗟に目を暝ったわたしに触れた何かが窓から吹き込む風だったのかあなたの唇だったのか、一生分からなくたっていいとおもう。
きゅ、と握られた手だけでわたしにはもう十分だった。
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「期待させて悪いけど」
あなたの吐息と
どこか愉しそうな目が、
わたしの心臓を引っ掻いた強く掴まれた手首が
ぎりり、と音を立てる
「俺、誰にでも
優しいわけじゃないから」
わたしはもう、
逃げられないとおもった。
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「脳みその重さって
どれくらいか知ってる?」
「およそ1300グラム、
なんだって」
「あんたバカだから
そんなに重くないかな」
「でも、願いだから
どんなにバカで
頭の中が空っぽだって、」
「あたしを忘れないで。
忘れないで、いて」
「…忘れるわけないだろ」
ひとり、雨の中。
腕に抱えた白い花束。
冷えた墓石に
そっと、触れた。
「おれは、
今だってこんなに」
「なあ、」
1300グラム。
たったそれだけが
今も、
君を求める。