詩人:halcyon | [投票][編集] |
知らない振りが彼の癖。
それがいいところでもあり悪いところでもある。
けれど、
その行動には
愛がこもっている事を
わたしは知ってる。
知っているのだ。
「おまえ、その、いつ…」
「いつ…なんです?」
「いや、やっぱりなんでもない。忘れてくれ」
「そうですね。2、3年前くらいですかね。別れたのは」
「…そうか」
「はい。別れたっていっても随分一方的でしたけど。あの人、死んじゃったんで」
私は彼の為に出来るだけ
なんでもない事のような
声を出した。
「…そうか」
俯いた彼が繰り返し呟いた一言に膝を抱えていた
手が震えた。
「そうですよ。
だから、わたしはいまひとり、です。」
ひとり、口に出したのはあまりにも久しぶりな言葉だったから、ああ、私はいままでこの言葉を無意識に避けていたんだなと思った。頬をつめたいなにかが伝った。彼はいつの間にか俯いていた顔を上げ、私を見ていた。
「おまえの傍には、いま、おれがいる」
「だから、ひとりではないだろ」
「なあ」
まっすぐ私を見てそう言った彼に、私は自分に出来るだけの笑顔を向けた。
そして涙をぐっと堪えて目を閉じた。
私はこれからの人生を彼に託そうとおもう。
いいかな?
私は、今を生きていく。
ごめんね。
愛してたよ。
詩人:halcyon | [投票][編集] |
大人になることの意味は
まだ分からないけど、
守りたいものがあるから。変わらないものはないと
分かっていても、
今この瞬間、
手にしているものだけは
信じていたいから。
あたしの、
頼りない手にだって
力がこもるんだ。
だからお願い。
差し出したこの手を
走りきるまで放さないで、
詩人:halcyon | [投票][編集] |
思い浮かんだのは、
節くれだった働き者の手
カサカサだったけど
とっても温かかった
優しかった。
だいすきだった。
ねえ、おばあちゃん
ごめんね
ごめんなさい
あたしも
おおきくなったからか
遠くなっちゃってたよ
おばあちゃんへ、
が薄れちゃってたよ
あたしは馬鹿で最低だ
ごめんなさい
もっともっと
かわいくて
いい孫でありたかった
ねえ、
おばあちゃん。
泣いていいかな。
なんだかね、
ぐちゃぐちゃだけど
やっぱり涙が出る
悲しいよ。
詩人:halcyon | [投票][編集] |
「おにいちゃんはどうしてそんなにやさしいのー?」
「んー、
どうしてだと思う?」
「えっとねー」
「んー?」
「わたしの
おにいちゃんだから!
ね!」
「そう、
おにいちゃんだからだ」