そこには

震える字体で

凪ぎ払うように書かれていた



・・・母が死んだと書いてあった

父が死んだと書いてあった
兄が、弟が
姉や、妹が

・・・死んだと書いてあったんだ


胸に、手を当てて

考えてください


あなたは、その思いつく家族の中で


死んで良かったと

そう言える人はいますか？

いないのなら・・・

あなたは幸せです

もし、いると言うなら・・・


それはきっと


悲しい・・・

悲しい幸せです

親が子を殺す？


子が親を殺す？


あはは


当たり前のことじゃないかい？


あなたは笑うことなく


真剣な眼差しでそれを否定するかい？


それこそお笑い種さ


むしゃぶりつくように

むさぼるように

貪欲に貪欲を連ねる






さあ、あなたが抱える赤ん坊


今ここで窓から突き落とせよ？


死ぬよ


見事に、さぁ？


死ねよ死ねよと呪う言葉より


よっぽど現実的で効率的だ


やめて？ なにが？


なにを止めるのはあなただ


その手に持つ刃よりよっぽど残酷に


――殺せるのに


あーあー捨てないで

赤ん坊が泣いたじゃないか

それでも親かい？

いや・・・もうすぐそうじゃなくなるかな？





いざ忌まわしき記憶よ


久方ぶりのピエロを威せ


慰せ 似合わぬ夜のモラルを食いつくそうか


あなた・・・二度目だよね


よく我慢していたよ


さあ殺せな
意味もなくただの殺人衝動にかられて
意味もなく自身の腹から生んだ子を殺せな






・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・



またやらないの？


え


あーあ・・・・・・自分で死ぬ道？


血が汚いねぇ


初めてのシャワーが母親の血かね


くはは
くかか
死んじゃったねぇ・・・























あなたはこの子供が可哀相と思う？


それとも母親が可哀相と思う？


はは


どう答えようと自由さ


でも


少なくともねぇ


















どちらにでもいい


少しでも


この親子のことを


可哀相だと思ったあなたの


その心の中にあたしは


このピエロは有り得るのさ

ごめんなさい。
すいません。
申し訳ありません。


私の息子が迷惑をかけまして


……今の世の中
もうこの言葉は死んだのかな？

なあ、少年


なんで生きているってこんなにキツイんだ


死にてぇと……思わせるんだよ

井の中の蛙、大海を知らずって言葉があるけど


それはとてもとても悲しい言葉


外の世界を知らない蛙は


井の中で一人で威張っているのかな？


一人しか蛙はいないのかな？





……友達や恋人
誰もいないのかな


いたら、蛙はどうするんだろうね


一人で旅立つのかな


あなたはそんなことを経験したことがある？


残された人の、蛙の気持ちを


……少しだけ


その胸の内で思い描いてください

失念という奥さんがいたら


きっと残念という旦那さんがいるんだろうな


知らないといえども


二人の間で


無念という子供が生まれる


それは


とてもとても残念なこと


でも


彼らにとっては


失念と残念たちにとっては


大切な大切な


無念なのだ

落ちはだれも考えてくれない


この一杯でココアが終わるように


誰もそれを作ってはくれない


自分で、考えるしかない


誰も助けてくれなくても
誰も見てくれなくても


心根につく夢のよう


ただひたすらに


落とせよ　人よ

白馬に乗った王子さまがやってくる


そんなことを夢を夢と思わず
信じていたのはいつのことでしょう


童話を信じていた少女の言葉のように
いつか誰かが助けてくれると思っていたのはいつのことだろう。


神を信じている人は笑うかもしれないけど
神様は本当にいるんだろうか


幸せな時、あなたのなかに神様はいますか
不幸な時、あなたのなかに神様はいますか


……どちらも心の中にしか存在しない
存在しないのに言葉は存在する




王子様も
神様も

私の隣にはいなかったんだ

正しいことを
正しいと思うのを
どれだけ素直に出来るだろう――

どれだけ正しさを貫けるだろう
人は悩んで苦しんでも
決断できないこともある


人は
間違いを間違いと
認めることと同じぐらい


正しさを正しさと
認めることは難しいのだ


ああ　難しいのさ

世界が終わるとき

それはきっと

たくさんの可能性が

潰される瞬間に酷似しているんだろうな・・・・・・