詩人:まとりょ〜鹿 | [投票][編集] |
遠く微かに聴こえる
波の呼吸
二度と交わる事のない
古き日の香り
手垢だらけの表紙
木の葉影る午後の灯。
優しい記憶に
春を思い浮かべては
突然の通り雨
血生臭い悲しみ。
仕方ないさと
自ら悟ったフリをして
僕は今日も
修羅の旅路。
送る宛てを亡くした
皺だらけの絵葉書
写真の中の僕は
こんなにも幼いのに
今はもう
笑顔すら不器用になる
どうして君よりも
先へ進まなければいけないんだろうか?
瞼の裏側
止まったまま笑う君
時折呼吸を忘れて
神様の存在を憎いと思った。
変わる事ない場所で
流動的に急いた僕。
お前は馬鹿なんだと
幼いままの写真の君は
もう僕を叱らない。
神様を睨んだ僕に
神様は機会を与えない
唯一僕が
持ち合わせたのは
無惨に過ぎ行く時
望まぬ体だけの成長
だけど止まぬ落葉に
せめてあと少し
もう少しだけでも
散らないでと
神頼みをする。
君に会えて良かったと
僕が口に出せるまで。