詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
街の駅は土砂降りで
私はゆっくり歩く、晴美ちゃんを追い掛けて
どこまでも階段をかけ昇る
ホームにはハルミちゃんがいた
短い黒髪が、濡れて
まっすぐ線路の闇を見ていた
ハルミちゃんは綺麗だった
黒いキュロットに ベージュのカーディガン
細い、華奢な足
ハルミちゃんはとても綺麗だった
私は汚いスニーカー
ずぶ濡れの、ダサい女
ネズミみたい
ハルミちゃんは
同じずぶ濡れでも
白ネコみたいに綺麗で
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君が真夜中に触れた
耳たぶの下が
まだ愛しい
そっと 荒れた指先で触れて時間を止めた
君の手のひらの湿度は
私の肌にちょうど良い
数学は苦手だから
やっぱり温度が良い
人を殺して-100
人の命救ったら+100
で、0
なんて おかしすぎるじゃない
君のあたたかさを知ってるのは
私
キレい事ばかり言うのは
私 だね
汚れを みせても君は
笑うね
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夜明けの排水溝からピンクのトンボがでてきて
私にキスをする
洗ってない食器が無造作に置かれた台所
暇が怖い
寝巻にコロンを吹き掛けて
薄暗い路地に出る
何となくサボテンを買いに行く
インドカレー屋の看板をフランス人が凝視している
不意に逃げたくなった、11年前の講習を思い出した
ついに夜明けが肩を叩く
振り返ると、スポーツカーに乗ったラーメン屋の息子が微笑んでいる
なかなかいい声の持ち主らしい
明るくなり
蛍光灯が消えた
ぶんぶん言ってた蛾たちも解散した
町が呼吸を始める前に
私はジュラ紀の鳩をおもいながら
四畳半に帰っていく
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あっ、て言えるの素敵だね
あっ、て言ったら誰かが振り向いてくれるじゃない
下手くそでも
ネガティブでも
情けなくても
嫌われても
何かを言って、
人に気付いてもらえるのは素敵
やっぱり 海底の貝みたいに
誰にも気付かれず生きてくのは辛い
私は人間だから
魚に憧れていても
やっぱり 、人間と 生きたい
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飾らない人になりたい
悲しい時に泣いて
楽しい時に笑うのがいい
お腹が空いたら大好きな物を思い浮かべ
寂しいときは大切な人を想いたい
どうしようもない時は
途方に暮れたい
そして、しばらくしたらもう一度頑張りたい
お金がない時は
大好きなチョコレートを我慢したい
大好きな友達と 時々
時間を忘れておしゃべりしたい
豪華じゃない、本当に必要な僅かなものに囲まれて暮らしたい
大好きな人を一生守りたい
裏切られても
変わってしまっても
ただ
無条件に愛しつづけたい
理屈じゃなく本能のまま
いつまでも
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お布団が私を離さない うちは
あなたに逢えません
寒いのです
おしっこがしたいのです
が
布団から出られないのです
私は弱い人間です
でもきっと
リンカーンも
孔子も
マリリン・モンローも
ソクラテスも
お布団という楽園を前に
おしっこ我慢したのでしょう
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ゾンビみたいに
フェンスごしに輝くラスベガスを見ている
モルモットみたいに
延々ぐるぐるまわりながら
かつて覚えたあの麻薬の味
堕ちる、一瞬の
悦楽と絶望に挟まれる感覚が忘れられず
恋を覚えて
ゾンビになった
君を覚えて
人間になった