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剛田奇作の部屋  〜 新着順表示 〜


[166] 願わくばサボテンの埃に
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

君は、会うたび私の知らないことを話す


お蔭さまで
こっちは妄想のスパイラル


まがりなりにも張り付くプライドのせいで


君に真実を確かめることもできず


君に感づかれないよう、そっと歳をとってく


いつも初めて見る服を着ている君


私たちが会ってない、新鮮な証拠


「仕事は上手くいってる?」

「そうなんだ」


「君のお嫁さんて、相当風変わりなはずだよね」


君のアパートのユニットバス

漂泊剤…ツンとした匂い だった


殺風景な部屋の冷蔵庫の上に

私が気まぐれにあげたサボテンが枯れずにちゃんとあった


来れなくなるならメールくらいちょうだい


でなきゃこんな遠い街のパーティーなんかにこないわよ


弱くて、私からは聞けない


君だけに会いに行くほど強くもない


ねえ、


君の部屋の


願わくば、私は


サボテンの埃になりたい





2009/01/24 (Sat)

[165] 命日
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アマゾンみたいな低い空の下


無数の渡り鳥に急かされ
息切れを覚えた真っ赤な夕日


地球を抑制する理性は豚のお面を付けて隠れ上手のつもり


冬、切れたつま先をみつめるチンパンジー


夏、歪んだ大陸を査定するペンギン


今じゃバス停を作りすぎたせいでバスはやってこない


生臭い人間の領域


コカインの元になったのは
八百屋で落としたコンドルのタマゴ


賞味期限は午後3時


海水、干上がる
午後3時


地球が永眠る、
午後3時




2009/01/24 (Sat)

[164] パトロール
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つくる度、味の違う私のうどん

散ったネギが少し痛々しい


貴方は金曜日
これが好きだと
黙々とすする


「そんなものを見ても
僕はカボチャは食べないよ」


新しい料理の本を見て
警戒なんかする

嫌いなものを食べさせようなんて考えたことはないのにさ


貴方はウサギみたいね

神経質なウサギ


飼い馴らすことが目的じゃないの


貴方の鳴き声は私の非常食


貴方の未来は私の主食





2009/01/23 (Fri)

[163] コロンブスバラード
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実らなかった過去の恋は極上のエスプレッソ


浮気性な彼のセリフは歴史から消えた幻のチョコレート


古代文明の閃く音楽が


ジュラ紀の鳩の、真紅の瞳を潤ませるように


遠くに旅立った恋人の叫びは


麻に包んだ香辛料の誘惑
シルクロードの焦燥


甘く
遠く


天竺まで、たなびくのは


地中海
ココナッツの香り





2009/01/24 (Sat)

[162] 紙コップの愛
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メイクも酷く下手くそだったあの頃


ブルーのアイシャドーもアイラインも
めちゃめちゃに書いて


安物のファンデーションでソバカスを隠した


濃すぎる眉を引いて
駐輪場にはりつく虫


隠し切れないのはソバカスだけじゃなかった


浮ついて、堂々と君を探しては
渇いた口元を押さえた


下駄箱のピラミッドをミニチュアとも知らず解体

中には健気にも君が眠ると信じて


語るのはカーテンの中の君


本当は歩き方や、カバンの掛け方しか知らなかった

君のペンの持ち方を懸命に真似て


君の好きなコーヒーを
いまだに時々、買ってみる


甘すぎるその味は


いつかの雨の匂い


錆びた階段の手摺りの感触


オモチャの愛のうた





2009/01/23 (Fri)

[161] 名作の君
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アイマイなんか糞喰らえだわ

待つのなんか大嫌い

いつまでポリバケツの蓋を握りしめて

湿っぽい歌を探してるの

早く私を抱きしめに来なさいよ


そんなギターへし折ってやるわ


私を愛してると

今すぐ叫んでよ

小綺麗な歌なんか要らない


どんなアートも体温には勝てないの


これ以上、運命を
待たせないでよ






2009/01/23 (Fri)

[160] 洗濯機とコーラ味のキャンディ
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降り注ぐ洗濯バサミ

カラフルな安っぽい、Tシャツ

雨上がりのありふれた虹に小躍りするような街角

水溜まりに落ちた水玉下着も照れ笑い


生まれ変わってから私は一度も

笑っていないこと

思い出せたの


君の、おかげで


思い出せたの




2009/01/21 (Wed)

[159] 
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酷く雨が降っていたので
僕は、始め、それが雨漏りだと思った


しかし、それは油だった


家のちょうど中央に位置している柱の根本に

黒く、まあるく染み出していた

拭っても拭っても染み出すので気味が悪かったが

とりあえず放っておいた


ある日、母から電話がかかってきた


あんた、油、ちゃんとしてる?


油?
ああ、あれ
なんともならないよ


きちんとなさいよ
今のうちだからね


うるさいなぁ
忙しいんだよ

僕は、電話を切った


柱が油で溶けて沈み、少し家に歪みがでたらしく

ある日突然、扉が閉まらなくなった

嫌な予感がしてベッドを持ち上げるとやはり油が染みていた


新聞を敷き詰め、週に一度代えるのが日課になった


彼女は、ポッキーを食べながら

そうなっちゃったらもう駄目よ
貴方も沈むわよ

と、悪戯に笑っている





2009/01/23 (Fri)

[158] 
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やっと見つけた

小さなデパートの雑貨屋で

君にぴったりの香り


もちろん即買いしたさ、
香りの名前も見ずに


嗅いだ瞬間に
君の、

うなじと耳の裏を撫でる仕草が浮かんだ


君がそっと隣に
腰を下ろし


ハンドバッグを膝にのせたあの時をね


探したよ


ミルクみたいに柔らかいけど
すごく角があって
クセがあるんだ


ねぇ、僕はやっぱり


ものすごく格好悪いやつなのかも知れない



君を無くしてから二年、

忍びよる春


僕はもう、大人


歳をとりたくない


…なんてね


笑わないでくれよ





2009/01/18 (Sun)

[157] コスモタニア(彼女の名前)
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

なんとなく買った新発売のブルーの豆電球は


彼女の部屋に、意外によく似合った


裸足の足をベッドの中で擦り合わせながら
見上げる青いランプ


深海を漂う、
一人ぼっちのクラゲみたいに頼りないブルー


狭い部屋を
ひそやかに浮かび上がらせる


開けっ放しのドアの向こう

開けっ放しのピアノ


貼りっ放しの古い映画のポスター

黒い紙面にブルーが反射して

何かを映し出そうとしているようだった


首の角度を変えると消えてしまう

ブルーの映像
透き通る残像

それは

グランドキャニオンみたいな崖にも

清らかな夜の入り江にも

静かに躍動するアクアリウムにも


見えた


お酒は、少しも飲めないけれど

碧いカクテルがここにあれば

どんなに素敵だろうかと

彼女は思った





2009/01/21 (Wed)
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