詩人:剛田奇作 | [投票][得票][編集] |
別に土産のおまんじゅうの名前ではありません
彼は 列記とした夢太郎でした
夢子でも夢男でもなく
先日 うちの実家に転がりこんだ夢太郎
母は嫌がり 市役所に電話したが どうにもならないというので
結局私が引き取ることになった
母は自称リアリストだから
そして毎日
夢太郎は延々と夢を語る
そしてテレビCMの合間に鼻をほじったりする
ストローの先を噛みながらジュースを飲む
彼はさらに夢を語る
彼はサラミの包み紙を折りながら
もし俺がスーパーモデルだったらなんて 話し出す
ハンバーグに入れる玉葱は少し炒めてから挽き肉とまぜろ とか
なぁ 俺が映画監督ならばすごいぜ とか
私は 次第に夢太郎と過ごすのが苦痛になってきた
ある雨の日
ついに夢太郎が消えた
それとほぼ同時に
うちの庭に
原色の唐草模様の電信柱が立っていた
ある日部屋を片付けているとき
忘れかけてた夢太郎の日記らしきものを 見つけた
その中に
「もし俺が電信柱になったら」
という項目があり、詳細な絵も描かれていて
その絵が庭の電信柱の柄と同じだった
彼はなんと夢を叶えていた
間違いなく彼は
夢太郎だったのだ
ただ雨の朝
その原色の唐草模様の電信柱をみるたび
なんとも言えない複雑な気持ちが込み上げ
少し私は欝になる