詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
横になれば僅か一畳分くらいの
肉の塊
でくのぼう、私
でくのぼうは、今日もあれこれ手足を動かして
なにやら狭い空間で生命活動を続けている
日々、家族と呼ばれる人間たちのために食糧を調達し、加工し、容器に入れて出したり、片付けたりする、そして時々変な声を出したりする
多分、でくのぼうは燃えるゴミに出せるだろう(火曜と木曜)
付属品の眼鏡は燃えないゴミ(水曜のみ)
たった一畳分の、でくのぼう
ゴミになっても世界は普通に回るだろう
それでもきっと、でくのぼうは 感謝している
でくのぼうなりにいっぱい遊んだし
公の場で詩もたくさん書かせてもらい
高級チョコレートも食べたし
ブルーチーズも数え切れないくらい
でくのぼうを愛してくれる人に会えたし
だけど ここ一世紀くらいでずいぶん人道的な世の中になったので
でくのぼうは月曜も木曜もゴミに出されずにすむのだ
そうしてあと数十年せっせと手足を動かして
良い事や 悪い事や
そのどちらでもない事を 行い
いつかは燃えることだろう