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剛田奇作の部屋


[343] でくのぼう
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

横になれば僅か一畳分くらいの

肉の塊

でくのぼう、私

でくのぼうは、今日もあれこれ手足を動かして

なにやら狭い空間で生命活動を続けている


日々、家族と呼ばれる人間たちのために食糧を調達し、加工し、容器に入れて出したり、片付けたりする、そして時々変な声を出したりする


多分、でくのぼうは燃えるゴミに出せるだろう(火曜と木曜)


付属品の眼鏡は燃えないゴミ(水曜のみ)


たった一畳分の、でくのぼう


ゴミになっても世界は普通に回るだろう


それでもきっと、でくのぼうは 感謝している


でくのぼうなりにいっぱい遊んだし

公の場で詩もたくさん書かせてもらい

高級チョコレートも食べたし

ブルーチーズも数え切れないくらい

でくのぼうを愛してくれる人に会えたし


だけど ここ一世紀くらいでずいぶん人道的な世の中になったので

でくのぼうは月曜も木曜もゴミに出されずにすむのだ


そうしてあと数十年せっせと手足を動かして

良い事や 悪い事や
そのどちらでもない事を 行い


いつかは燃えることだろう



2010/02/17 (Wed)

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