詩人:剛田奇作 | [投票][得票][編集] |
何千 何万もの、鳥
鳥の、群れ
太く、黒い
チューブのように
歪みながら群れをなす、鳥
鳥たちが、飛んでいる音が聞こえている
もう 遥か
長いこと
聞こえ続けている
無数の羽音と鳴き声の混ざったような
鳥の群れる独特の音が
もう遥か何年も
響いている
私は 人々に聞く
鳥は群れていますか、と
人はいつも
鳥は群れていません、と答える
鳴き声なんて なにもしません、と
明け方
山も空も呼吸を潜め
全ての音が止まるとき
鳴き声は
いっそう響き渡る
薄暗がりの中で、ただその群音のみが響いている
命は鳥のかたちをしている
それは 輪をなす命の音色
私の耳に聞こえる音色
あらゆる生命が、躍動し
群れる音
長さすら正確にわからない
鳥たちの群れ
威勢良く元気な命が群れの先頭を無し
真ん中には、まだ幼い
若い命たちが、守られるように飛んで
末尾には点々と、
今にも尽きそうな
老いた命が 細く 細く
列なる
しだいにほんとうに飛ぶ力を失い
渇いた地面に降り立つのは、枯れた命
私には聞こえる
鳴き声、鼓動、羽音、
彼らの巻き起こす緩やかで
時に激しい風の音が
休む事なく、それは
ただ響く
はじまりや終りもなく
それは
響き続けている
私や君の記憶の、遥か彼方
始まりの場所から
人々は空を見上げて言う
鳥の羽ばたく音なんてしない、と
私はいつも
音の根源を探しながら
空を眺めている
何も見えない空を